尾上菊五郎、片岡仁左衛門のパワーに感心 「六月大歌舞伎」出演、場内の雰囲気もより明るく
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> 尾上菊五郎(81)、片岡仁左衛門(80)の元気さが「六月大歌舞伎」(東京・歌舞伎座)の観客を喜ばせている。 初代中村萬壽と6代目中村時蔵襲名、5代目中村梅枝、初代中村陽喜、初代中村夏幹の初舞台があるにぎやかな興行で、菊五郎は夜の部に、仁左衛門は昼の部に出演し、披露口上に並んでいる。 菊五郎といえば、長男尾上菊之助が来年5月に8代目菊五郎を襲名し、自分も7代目菊五郎を名乗り続けることを発表したばかり。 会見の席で「2年前に脊椎の病気になり、休み休みになりました。菊五郎(という名前)は元気に働いてなきゃいけないという思いになりました」と、菊之助に菊五郎を継がせることを思い立ったと話した。しかし直後「でも治そうとしています」と前向きな気持ちを語った。 そんな会見から数日後の6月興行の初日。菊五郎の登場で大きく沸いた。劇場後方までよく響く菊五郎の声が気持ちいい。「萬壽さんのおうちは襲名やら初舞台やらおめでたいこと続きです」と笑みを見せ「萬屋さんご一門いついつまでもごひいき、おひきたてのほど、お願い申し上げます」と締めた。子供たち3人が元気に見えをする姿を後方から優しい表情で見守っていたのも印象的だった。 昼の部「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿」では、仁左衛門が珍しく女形をつとめている。仁左衛門も「おむらのような役は初めてです」と話している。この演目には、出演時間は短いがインパクトの強い「豆腐買おむら」という役がある。普段は立役だったり、主演を務める役者だったりが務めて、客席を沸かせるのだ。こういう役を「ごちそう」と言うのだが、仁左衛門が豆腐買おむらをやるなんて、まさにごちそうだった。出番そのまま劇中で襲名披露口上も行い、大いに楽しんだ。 菊五郎も仁左衛門も、登場した時は、場内の雰囲気がワントーン明るくなったような気がする。襲名に初舞台が満載の祝祭感あふれる舞台がさらに明るくなるのだから、この2人のパワーはすごいなと思った。【小林千穂】