広告売上高が前年比150%!「TVer特需」なのに番組制作会社は”存亡の危機”…その無慈悲な理由
再生回数が稼げるタレント
「TVer特需どころか、TVer地獄に陥っていますよ……」 地上波テレビの視聴率は低迷の一途を辿っているが、見逃し動画配信サービスTVerは広告売上高が前年比約150%の“特需”となっている。 【こんなアラフォーいる?!】アイドル時代そのままのミキティー さぞ、現場は潤っているのかと思いきや、中堅制作会社のプロデューサーは冒頭のようにタメ息を漏らし、こう続けるのだった。 「たしかにTVer用の編集・納品など、仕事はかなり増えました。ただ、作業が増えるだけで、プラスはない。我々制作会社には追加の制作費など、ビタ一文入ってこないのです。潤っているのは局だけ。特需どころかTVer地獄ですよ」 仕事が増えているのに収入がない、とはどういうことか。前出のプロデューサーは苦虫を嚙み潰したような顔でこう説明した。 「制作費がかなり減らされているので、番組で起用できるタレントの数は減っています。お試しでキャスティングはできず、勝つための“選択と集中”が不可欠。具体的に言うと、ゆうちゃみ(23)みたいにリアクションがうまい若い女性タレント、藤本美貴(39)のようなお茶の間のウケがいいママタレ、そして梅沢富美男(73)ら“大御所ご意見番”に絞られてくる。逆に言えばこの3タイプがいれば番組は成立するのですが、TVer特需を受けて“TVerで再生回数を稼げるタレント”のキャスティングを追加で求められるようになった。彼らのキャスティング費用に制作費を喰われ、利益がひっ迫しているのです……」 ちなみに、TVerで再生回数を稼げるタレントとは誰なのか。中堅放送作家によれば「熱心に推してくれるファンがいる人」だという。 「『Snow Man』、『乃木坂46』などのトップアイドル、しなこ(28)などZ世代から支持されるインフルエンサーらがそうです。彼らは重宝されていますね。特に効果が顕著に出るのがドラマ。旧ジャニーズ、つまりSTARTO ENTERTAINMENT社のタレントが出演しているかどうかでドラマはTVerのお気に入り登録、『いいね』の数が何十倍も違ってくる」 ◆バイトを掛け持ちするディレクター なかでも、バラエティに特化した制作会社は苦境に立たされているという。コンプライアンスでがんじがらめになった令和の今では尖った演出ができず、視聴率が低迷。わざわざ見逃し配信でバラエティを観る人は少なく、TVerでもバラエティは苦戦。放送枠を次々とドラマやアニメに奪われているという。 前出のプロデューサーが肩を落とす。 「平成のテレビマンといえば、バラエティのディレクターが花形でした。それが今や開店休業状態の人が少なくない。我々制作会社に『何か仕事はないか』と連絡が来ることもあります。助けてあげたいところですが、こちらも仕事がなくて困っている次第で……。 ウチにも昼はスーパー、夜は警備員のバイトをしながら仕事のオファーが来るのを待っているディレクターもいますよ。そういう私も、この秋で担当番組が3つも終わってしまった。残りあと2番組。それも終わってしまったら、ウチもいよいよ解散を考えねばなりません」 各局がTVer特需で実りの秋を迎えるなか、下請けテレビマンたちは厳しい冬を覚悟している。 取材・文:愛田プリン
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