黒江透修さんが4勝0敗で巨人に圧勝した90年日本シリーズで、西武ナインへ言い続けた言葉
巨人球団創設90周年記念の連続インタビュー「G九十年かく語りき」の第4回は、V9時代に遊撃のレギュラーを張り、鉄壁の内野陣を形成した黒江透修さん(85)の「喜怒哀楽」だ。巨人の緻密(ちみつ)なチームプレーを支え、勝負強い打撃も光った名脇役。指導者としても数々のチームを育て上げた“究極のナンバー2”が、巨人時代の記憶をたどった。(取材・構成=湯浅佳典、太田倫) みなさん、僕のことを名脇役、名参謀などと褒めてくださる。ナンバー2っていうポジションは性に合っていたし、天職だったんだろう。選手たちを指導するのも楽しかった。 西武時代の90年からは日本シリーズ3連覇。あのチームは強かったね。秋山、清原、デストラーデに石毛や辻、伊東。投手陣も強力だった。V9の巨人に匹敵、ひょっとしたらそれ以上の強さがあったかもしれない。 90年は巨人を4勝0敗で倒して日本一になった。うれしさも格別だった。「今の巨人は、たいしたことない。ウチの方が強い。絶対に負けはしない。自信を持ってやれ。巨人でV9を果たした俺が言うんだから間違いない!」。ずっと言い続けて選手に信じ込ませた。その時は言わなかったけれど、僕の役割も大きかったんじゃないかな。 一方で、4連敗で負けてしまう巨人が歯がゆくてね。「バカ野郎、俺をクビにするからだ! 当然だよ、バチが当たったんだ。俺がいれば、こんなチームにはなってないんだ」なんてね。怒りに似た感情が湧き起こったもんだよ。やっぱり愛着があるから…。あ、怒りなんてプロ野球人生の中でほとんどない、って言ったのに。やっと思い出したね。 ◆黒江 透修(くろえ・ゆきのぶ)1938年12月12日、鹿児島・姶良町(現姶良市)生まれ。85歳。鹿児島高から杵島炭鉱、日炭高松、立正佼成会を経て64年に巨人に入団。68年にはベストナインにも輝いた。74年に現役を引退した後は、巨人、中日、西武、ダイエーなどでコーチや2軍監督を歴任。現役時代の通算成績は1135試合に出場して3478打数923安打、57本塁打、371打点、打率2割6分5厘。右投右打。
報知新聞社