【2025年NISA戦略】世界同時株安が起きても日本株は「買い」の理由、焦点は日銀の利上げと円高シフト
(中野晴啓:なかのアセットマネジメント社長) 新NISA2年目となる2025年、株や為替はどう動くのでしょうか。前編では、「米国一人勝ち」とも言える状況が終わり、世界同時株安の引き金を引く可能性を指摘しました。では、日本はどうなるのでしょうか。 【写真】2024年は1ドル=161円台まで円安が進んだ。はたして2025年は? ■ 迷走気味の日銀、利上げはどうなる? カギとなるのが、日銀です。 日銀は12月の金融政策決定会合で利上げを見送りました。植田総裁はその理由について、「来年の春闘に向けたモメンタムなど、今後の賃金動向についても少し情報が必要」「次の利上げの判断に足るには、もう1ノッチ(段階)ほしい」などとコメントしました。これを受けてドル円相場は金融政策決定会合前と比べて3円以上、ジワジワと円安が進みました。 来年の春闘ということは、春頃まで利上げをしない可能性が出てきました。「1ノッチ」が何を指すかは不明ですが、トランプ政権誕生後の状況を見極めたい、ということだと見られています。マーケットは安心して円売りをできたわけです。日銀が介入しない限り、春くらいまでは円安傾向が続く可能性があるでしょう。 私は、今回の植田総裁の発言を聞いて、正直、日銀は迷走気味だなと感じています。
■ 日銀に迫られる二択 円安によって今や、国民はますます窮乏化しています。トヨタ自動車のような輸出企業がうるおう一方、消費者は円安による輸入品価格の上昇にあえいでいます。こんな不公平な円安を、日銀、政府はいつまで放置するのでしょうか。 日銀にはもはや、2つの選択肢しかありません。円安を食い止めることを諦めるか、もしくは利上げをして日本社会のインフレ耐性を高めるか、です。当然、取るべき施策は後者でしょう。 黒田前総裁時代、日銀は大規模な金融緩和を実施しましたが、産業界を抜本的に強くすることはできませんでした。むしろ、経営を甘やかし、資本効率は低いままで、企業の新陳代謝も進んでいません。日本の停滞は、10年続いた異常な金融環境と無関係ではないのです。 利上げをすれば金利負担に耐えられず、市場から退場を迫られる企業も出てくるでしょう。利上げは円高に作用するので、輸出企業は業績の下方修正を余儀なくされるかもしれません。しかし、そうした状況を経て、資本効率を改善し競争力を高めている企業が選別され、中・長期的に見て日本経済を強くするきっかけになるのです。 そのため私は、日銀は強い意志を持って、好ましい水準とされる中立金利の1%を目指して、金利を引き上げていくべきだと思います。1月にも利上げをするのが望ましいと考えますが、それが無理でも、2025年末には1%まで引き上げられていると予測しています。