カレーライス 無料の一皿、市民へ安らぎ 市川市「いちカレ」じわり浸透 困窮の証明不要、当初は怪しむ人もリピーターに
市川市が生活困窮者支援として、今年1月から開始した無料でカレーライスを提供する事業「いちカレ」が、じわり地域に浸透している。市が実費などを負担し、日々の生活に困っている人たちに「国民食」カレーライスを提供している。現在は軽食店など3店舗が協力し、さまざまな事情を抱える市民に一時の安らぎを与えている。 利用者は入店の際に暮らしの現状を証明する必要はなく、気軽に注文できる。カレーのレシピは市の依頼で和洋女子大学家政学部の学生が考案したオリジナルの「噛(か)んで元気に♪腸活カレー」。雑穀米を混ぜてご飯を炊き、食物繊維が豊富なゴボウ、畑の肉と呼ばれる大豆、県産ヒジキなどを具材に使ったヘルシーさが特長だ。 毎週金曜日にカレーを提供する「G.CAFE」は東京メトロ東西線・行徳駅近く、プロテスタント系の行徳キリスト教会1階。2010年から営業している。責任者の山本真仕牧師(47)が市の協力依頼に「地域に開かれた教会として役に立つなら」と応じた。店名の「G」は(1)God(2)Gospel(福音)(3)行徳(4)Glory(栄光)-の意を兼ねる。 利用者の数は一日30~40人。雨の日は少し減る。「ただでカレーが食べられるなんて本当か」と当初は警戒する利用者も少なくなかった。「『危なくないな』と安心したら、次は気軽に来てくれる」と山本牧師。 訪れる人はさまざま。「不景気で会社を辞めさせられ、今は年金で1人暮らし」という男性も。交通事故で障害を負った50代ほどの男性は母親に付き添われて訪れ、「働けないので収入がない」と悩みを漏らしながらカレーライスを口に運んだ。7月には「仕事が見つかった」と明るい表情になり、母親もホッとした様子だった。 山本牧師は「1週間誰とも話しておらず、ここで話をして救われたような気持ちになる人もいる」と打ち明ける。「いちカレ」が続く限り、協力する考えだ。