日米の物価事情から考えた…日銀の大規模金融緩和「正常化」はいつ?
第一生命経済研究所の藤代宏一氏は、「3月の金融政策決定会合で、何らかの形でマイナス金利の解除を示唆するシグナルを出した上で、その次の4月の決定会合でマイナス金利を解除するのではないか」とみる。 24年1月1日に起きた能登半島地震によって、1月の金融政策決定会合で日銀が政策変更を示唆する可能性は低くなったものの、地震が日本経済の大きな方向性にまで影響を与えることはないと分析。焦点となる今年春の賃上げ幅についても、「ベースアップで2%か、わずかにそれを上回るくらいか、という見通しがほぼ固まってきている」として、日銀がマイナス金利を解除すると判断できる材料は、すでに揃いつつあるとの見方を示した。
一方、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏は、マイナス金利の解除は「最短で4月の可能性もあるが、10月、あるいはそれ以降の実施がメインシナリオ」と予測する。日銀が春の春闘の結果を見極めてから判断するとの見通しに加え、「アメリカのFRBが利下げするという観測が強まるときは、日銀は逆に動きにくい。アメリカの利下げが一巡してから動くのではないか」というのだ。また木内氏は、もし春の賃上げが好調だったとしても、「日銀が『賃金上昇を伴う2%の物価目標を達成した』と判断できるほどの賃上げは難しい」とみる。それでもマイナス金利を解除するには、市場との対話に一定の時間がかかり、日銀も政策変更を急がないだろうと分析した。 ただ両者とも、日銀がマイナス金利を解除したとしても、さらなる利上げを行うような環境には「すぐにはならない」と指摘している。本格的な「金利のある世界」が訪れるのはまだ先になるのだろうか。 平成生まれの筆者にはほとんど経験したことのない「金利のある世界」や「経済の好循環」。それをイメージするヒントになるのが、年末に話したある企業幹部の言葉だった。「金利のある世界が戻ってきて、経済の好循環が起きるようになると、例えばスーパーでもみんな、棚にある高い方の商品を買うようになる。みんなが安い物ではなく、良い物を買おうというマインドになるんだ。そして経済が成長していく」。そんな日本を目指して、物価と賃金の動向、さらにアメリカ経済の行方もにらみながら、2024年の日銀は難しい舵取りを迫られる。