シャープ堺工場停止で堺のふるさと納税ピンチ 返礼品からアクオス除外 寄付額大幅減も
シャープが9月までに生産停止することを決めた液晶パネル工場「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」。地元の堺市に思わぬ影響が及ぼうとしている。同社の液晶テレビ「アクオス」シリーズが、ふるさと納税返礼品から外れることになるためだ。アクオス目当ての寄付は、寄付総額の約3割を占める〝稼ぎ頭〟。市は「正直、痛手だ」と頭を悩ませる。 【写真】シャープ本社と堺ディスプレイプロダクト 総務省はふるさと納税の返礼品について「(当該自治体の)区域内において返礼品等の製造、加工その他の工程のうち、主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているもの」と定めている。堺市もこの基準に基づき、製品の「主要な部分」である液晶パネルがシャープの堺工場で生産されていることから、令和4年度にアクオスを返礼品に加えた。 効果はすぐに表れた。4年度の寄付総額は前年度比約5・5倍の約11億6千万円に急増。5年度もさらに伸び、約15億5千万円(速報値)となった。そのうち、アクオス(約10品)への寄付は4年度約3億8千万円、5年度約3億5千万円と寄付総額の2~3割を占めており、アクオスが押し上げた格好だ。千品目に及ぶ同市の返礼品の中でも「主力商品」になっている。 市の担当者は「液晶テレビは比較的高額な商品なので、それに応じて寄付額も高くなる」と話す。 市によると、現時点では、堺工場が製造した液晶パネルを使用するアクオスの在庫があるため、一定期間は返礼品として提供が続く見込みだ。ただ、生産停止でいずれ在庫がなくなれば、ラインアップから外れることになる。市は、在庫が尽きる時期は不明としている。 ふるさと納税制度では地元住民が他の自治体に寄付した場合、住民税が一部控除されるため、本来徴収できた税収を得られなくなる。返礼品競争の激化とともに肉や魚介類など人気の返礼品をもつ自治体に寄付が集中し、人口の多い都市部の自治体が税収減になる傾向がある。 堺市も、寄付額から税の減収額などを差し引いた実質収支はマイナス約3億3千万円(4年度)と苦戦。同市の返礼品のラインアップには、電動自転車や包丁などの地場産品も並ぶ。主力の離脱に備え、市の担当者は「今ある返礼品のPRや、新しい返礼品の開拓に努めたい」と話す。 ■堺ディスプレイプロダクト(SDP)
シャープが約4300億円を投じ、平成21年、最先端の液晶パネル工場として堺市堺区に建設。堺市が新日本製鉄(現・日本製鉄)の製鉄所跡地に誘致し、固定資産税、都市計画税の減免措置を講じた。パネルの生産停止後の跡地利用として、人工知能(AI)向けデータセンターとして転用する協議が進んでいる。(木津悠介)