国民感情的には「反日」「反中」が大勢を占める中で両国が急接近、日中友好は本当に深まるのか
■ 筆者が参加した丁薛祥副首相との会議 今年の7月15~18日に開催された中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)では、習近平が掲げる「中国式現代化」をさらに推進して、建国80周年の2029年までに改革の任務を完成させるとした。 そして、「改革を一段と全面的に深化させ、中国式現代化を推進することに関する党中央の決定」を審議し、採択した。その中で、とくに「科学技術体制改革の深化」と「財政体制改革の深化」について、多数の文字数を費やしている。 私は、12月2日に北京で習近平の後継者とされている丁薛祥(ディン・シュエシアン、Ding Xuexiang、ていせつしょう)副首相との会議に出席したが、その中では、丁薛祥は、7月の三中全会の決定を引用しながら、「改革」という言葉を連発した。 しかも、丁薛祥は、毛沢東の名前は一度も出さずに、鄧小平の名前を出し、1978年に鄧小平が始めた改革開放経済政策以来、中国政府が一貫して改革を継続していると述べたのである。 これには、正直驚いたが、7月18日に採択された三中全会のコミュニケで、「現在および今後一定期間は、中国式現代化をもって強国建設、民族復興の偉業を全面的に推進する肝心な時期である。中国式現代化は改革開放の中で絶えず進められてきたものであるから、必ずや改革開放の中で明るい未来を切り開いていく」と記されている。300もの改革項目が、三中全会決定の全文には含まれている。 また、習近平は鄧小平よりも毛沢東に親近感を抱いているし、その政治手法は毛沢東に近い。習近平にとっては、改革開放を始めたのは父親の習仲勲副首相であり、鄧小平がその成果を盗み取ったと考えているとされている。その意味で、鄧小平は「父の敵」であるというのが私の理解だったので、丁薛祥が鄧小平の改革を推進すると言ったことに違和感を覚えたのである。 しかし、三中全会のコミュニケは、また、「改革をいっそう全面的に深化させるには、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、『三つの代表』重要思想、科学的発展観を堅持し、習近平『新時代の中国の特色ある社会主義』思想を全面的に貫徹し、習近平総書記の改革の全面的深化に関する一連の新思想、新観点、新論断をいっそう学習して貫徹し」、と述べている。 つまり、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平思想の三つを並記しているのである。