倉本聰脚本作『海の沈黙』公開日が11月22日に決定 本木雅弘、小泉今日子、中井貴一ら出演
倉本聰が原案・脚本を務めた映画『海の沈黙』が、11月22日に公開されることが決定した。 【写真】倉本聰脚本ドラマ『やすらぎの刻~道』 本作は、原作・脚本を手掛けた倉本が、60年前から抱え込んできた「美術品の贋作」をテーマにした人間ドラマ。美とは、権威とは何なのか、そうした矛盾に立ち向かう1人の天才画家を中心に登場人物の痛切な人間模様が描かれている。 主人公となる孤高の画家・津山竜次を本木雅弘が演じるほか、小泉今日子、中井貴一、石坂浩二、仲村トオル、清水美砂、菅野恵、萩原聖人、村田雄浩、佐野史郎、田中健、三船美佳、津嘉山正種がキャストに名を連ね、『沈まぬ太陽』や『Fukushima 50』などの若松節朗が監督を務めた。 世界的な画家、田村修三(石坂浩二)の展覧会で展示作品のひとつが贋作だと発覚し大事件に。この絵を描いたのは一体、誰なのか? 連日、報道が加熱する中、北海道 ・小樽で女の死体が発見される。この2つの事件の間に浮かび上がった男。それは、かつて新進気鋭の天才画家と呼ばれるも、ある事件を機に人々の前から姿を消した津山竜次(本木雅弘)だった。かつての竜次の恋人で、現在は田村の妻・安奈(小泉今日子)は小樽へ向かう。もう会うことはないと思っていた竜次と再会する安奈、竜次に長年仕える謎のフィクサー ・スイケン(中井貴一)、贋作事件を追う美術鑑定の権威・清家 (仲村トオル)、全身刺青の女・牡丹(清水美砂)、竜次を慕うバーテンダー・アザミ(菅野恵)。それぞれのドラマが、“真の美”を求め続ける竜次の想いと交錯していく。 ■コメント 倉本聰(原作・脚本) 60年前から抱えこんできた僕にとっての大きなテーマがある。美術品の贋作というテーマである。美術作品の価値というものは社会的権威によって保証される。だがその価値基準は元々極めて主観的なものである。だから世の中には贋作が絶えない。過去に日本にもそういう事件があった。重要文化財として認定されていた一つの美術品が贋作と判明し国の指定から外されたのである。美とは何なのか。権威とは何なのか。これは、そうした矛盾に立ち向かった一人の天才画家の悲劇である。 若松節朗(監督) 老いてなお創作に情熱を燃やす脚本家、倉本聰さんの今回のテーマは「美とは何か?」この映画化にあたり僕にとって、いつにも増して大きなチャーンジとなりました。幸い本木雅弘、小泉今日子、中井貴一始め多くの芸達者な俳優陣が結集し見応えのある映画になったと自負しています。この作品は制作側から観客の皆さんへの問いでもあります。「美とは何か?」皆さん其々の美を見つけて頂きたいと思います。 本木雅弘(津山竜次役) 初の倉本作品にして、黙する孤高の画家という難役に踠き苦しみましたが、40年来の同志である小泉さんとの共演にはリアルな感慨もあり、熟練の若松監督と中井さんの支えによって、不思議なアンサンブルが生まれました。観る者を突いてくる美への教訓、追憶という哀しいぬくもり、倉本先生が語る世界の奥深さを皆さまと共有できれば嬉しく思います。 小泉今日子(田村安奈役) 美とはなにか。本物とはなにか。倉本聰さんが今、私たちに投げかけたテーマに姿勢を正されるような思いだった。その矜持を私はきちんと受け取り、そして演じることができたのか今は自信がない。けれど、成熟した大人の映画が、この日本に誕生したことを心から祝福したい気持ちです。 中井貴一(スイケン役) 倉本作品に呼んでいただく時、いつも思うのです。私の本質を全て知られ、見透かされ、キャスティングされていると。というわけで、今回は謎多きフィクサーと相成りました。作品のテーマは、美。美ほど、観念的なものは無い。でも、人はそれにランクをつけ、金銭という数字をつける。資本主義経済の観点からすれば、至極当たり前のことなのかもしれないが……美とは、美の価値とは、何なのか……今回の映画は、それをじっくり考えさせられる。 石坂浩二(田村修三役) “今”は無意味なものが情報として拡散し、メディアも又、右往左往、なにより金が総てと思い込まされ、否応なく人々は区別されていく、それが“今”です。本当に美しい、本物の自分らしさを求めていた人間も、やがて生きている、生きていかなければならない“今”に吞みこまれ、その“今”は昔からの自然の流れを思えて安心してしまう。私が演じるのは“今”だと思うのです。“今”は未来を思い遣ることは出来るのか? “今”が未来に重なる時はないのでしょうか。 仲村トオル(清家役) 僕は滅多に断言しないのですが「脚本は倉本聰さん、監督は若松節朗さん、これを断る人はいないよ」と、家族に宣言して、いそいそと撮影現場に向かいました。この作品に参加できたこと、数十年ぶりに小泉今日子さん、石坂浩二さん、中井貴一さんと同じ現場に立てたことはとても嬉しく、誇らしく感じました。 清水美砂(牡丹役) 私は純粋に倉本聰作品のファンとして倉本先生の新しい作品を大スクリーンで観られる喜びに心が躍っています。今でも自分が先生が描いた1人の女性を演じたなんて信じられないくらいです。“牡丹”と云う名前の如く咲いた花のまま朽ち落ちる悲しい女性。愛を込めて演じました。 菅野恵(アザミ役) 美しさとは何か。世間の評価によらず、美しいものをただ美しいと見つめることはどうしてこんなに難しいのでしょうか。恩師・倉本先生が長年温めてきた作品に携われたこと、素晴らしいキャストの皆様・スタッフの皆様とご一緒できたことに感謝しつつ、1人でも多くの方に届きますように!と心から願うばかりです。ぜひ劇場で、この作品の美しさをご堪能ください。
リアルサウンド編集部