<ズートピア>“ベスト・オブ・動物アニメ”の一つ 家族で語り合いたい不朽の名作 クスッと笑える小ネタも
「金曜ロードショー」(毎週金曜夜9:00-10:54※12月8日[金]は夜9:00-11:04、日本テレビ系)と「ウォルト・ディズニー・カンパニー」がタッグを組んだ「金曜ロードショーで見たいディズニー長編アニメーション映画」が、11月17日から4週連続で放送中。同企画の締めくくりとして8日に放送されるのは、2016年に劇場公開されて大ヒットを記録し、2017年の「アニー賞」(長編作品賞)と「アカデミー賞」(長編アニメーション賞)を受賞し「ベスト・オブ・動物アニメの一つ」とも称されるアニメーション映画「ズートピア」だ。今回も幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が本作を視聴し、独自の視点で見どころを紹介する。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】ジュディ&ニックも困惑…誰もが椅子から立ち上がりたくなる“超スロー”な動きのナマケモノ ■高い志を持つウサギの物語 今作の主人公はウサギの女性ジュディ・ホップス(CV:上戸彩)。ニンジンの栽培に精を出している両親の下、275匹きょうだいの何番目かとして田舎町で生まれた。ジュディの目標は「警察官になること」。よりよい社会を実現するための力になりたい、という高い志を持っている。だが、「警察官になる=身の危険にさらされるかも」ということで、はっきり言って両親としては不安だった。 275匹いずれもかわいい、かけがえのない子どもたちなのだから。「ウサギはゾウやライオンなどに比べて信じられないほど小柄だ、しかもウサギの女性が警察官になったことは一度もない、考え直してみては?」的な発言も出てくるが、ジュディは「じゃあ、私がその第1号になればいいのね」と、あくまでも前向き。 そしてトレーニングに次ぐトレーニング、努力に次ぐ努力の末、ウサギ界初の警察官として大都会「ズートピア」の警察署で働くのだが、「体格も声も大きくて力の強そうな男性動物が当たり前にゴロゴロいる」世界なので、最初はなめられっ放し。だが、せっかく警察官になったからには…とばかりに両親は応援モードとなり(携帯で連絡を取る)、ジュディの誠実さを認める人、じゃなくて動物も現れるようになる。 ディズニー映画はダジャレの宝庫なのではないか、というのが私の実感なのだが、今回もご多分に漏れず盛りだくさんの語呂合わせで楽しませる。主人公ジュディの苗字がホップス(Hopps)であるのは、ウサギが跳ねるように歩くところに由来しているのだろう。ウサギの歩き方は通常、walkではなくhopという言葉で表現するので(ホップ、ステップ、ジャンプのホップ)、その単語を苗字に盛り込んだわけだ。 ほか、行方不明になるカワウソ(otter)の苗字がオッタートンだったり、ネズミたちが買い物をする「Macy’s」風巨大デパートの名前が「Mousy’s」だったり、相当なダジャレ・センスが炸裂している。物語の準主役といえるジュディの相棒キツネ、ニック・ワイルド(CV:森川智之)が売っている“肉球アイス”の名前なんて、Pawsiclesというのだ。肉球はpaw、アイスキャンディーの複数形はpopsiclesなので、こういう言葉遊びが出るごとに英語圏の人は一家で笑っているのでは、と想像する。 ■「ゴッドファーザー」へのオマージュも? さらに、「大人がニヤリとするであろう」場面として、トガリネズミのミスター・ビッグ(CV:山路和弘)の登場シーンについても触れておきたい。太い眉、ハスキーな声、酔ったような口調。私は「映画『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドのようではないか」と思ったし、一定の年齢より上の方はこれにうなずいてくれるのではないだろうか。家族で「ズートピア」を見た後には、子どもたちに「ゴッドファーザー」を説明したり、マーロン・ブランドの素晴らしさを語り尽くすことも、また楽しかろう。 ちなみにミスター・ビッグが大好きな歌手の名は、ジェリー・ヴォール(Vole)。CDのジャケット写真を見ると、長年にわたって“ネズミ音楽界”に君臨しているスターであるようだ。このキャラクターに私は、即座にジェリー・ヴェイル(Vale)を連想した。ニューヨークのブロンクス地区に生まれた、高名なイタリア系アメリカ人ボーカリストである。 ディズニー映画の主人公といっても、ジュディは決して根っからの「人格者(動物格者)」ではない。子どものころから草食コミュニティで育ってきたということもあるのだろう、発言の端から、無意識のうちに肉食動物への差別や偏見とも捉えかねない発言が飛び出すこともある。だが彼女はそれを深く反省し、次の行動に生かす力がある。覆水は盆に返らないにしても、未来は意志次第で変えることができる。そのあたり、今あらためて見ても人間界へのメッセージが込められていると感じた。そして、これから何年先も家族で見て語り合うべき不朽の名作であるとも。 音楽は、アカデミー作曲賞にも輝くマイケル・ジアッチーノが担当。劇中でスター歌手・ガゼルがパフォーマンスする「Try Everything」は、コロンビア生まれの世界的シンガーソングライター・Shakira(シャキーラ)が歌い、日本版ではDream Amiの歌声が作品を彩っている。 「ズートピア」はディズニープラスで配信中。また、ディズニー創立100周年を記念した最新アニメ―ション映画「ウィッシュ」は12月15日(金)に劇場公開。主人公の少女・アーシャ役の日本版声優を生田絵梨花、“史上最恐ヴィラン”マグニフィコ王の日本版声優を福山雅治が務める。 ◆文=原田和典 ※記事初出時、一部誤りがございました。訂正してお詫びいたします。