『Split Fiction』は『It Takes Two』を手がけた巨匠が送る新作、SFとファンタジーが融合して協力プレイが大進化
2021年3月にHazelight/Electric Artsからリリースされたふたり協力プレイゲーム『It Takes Two』は、その個性的なゲーム内容で多くのプレイヤーの心を掴み、その年のThe Game Awardsを獲得した。 それから約4年後、Hazelightが“The Game Awards 2024”の場で2025年3月6日にプレイステーション5、Xbox Series X|S、PC向けに発売予定の新規タイトル『Split Fiction』のトレーラーを公開した。 【記事の画像(7枚)を見る】 公開に先立ち、筆者は個人的に『Split Fiction』を先行体験させてもらえる機会を得たのでご紹介。 うれしいフレンドパス続投! いままさに『Split Fiction』体験プレイを終えてから20分後にこの記事を執筆しているが、記事をほっぽりだしてもう一度プレイしたいという衝動がとても強い。 3月までこの興奮を我慢しなくてはいけないのは非常に苦しい。 Hazelight Studioがこれまで世の中に送り出してきた『A Way Out』と『It Takes Two』はどちらもかならずふたりで協力プレイをするという前提で作られたゲームだが、本作『Split Fiction』もふたりで画面を分割して目標を達成するという流れを継承している。 ふたりプレイ前提なのでひとりが『Split Fiction』を所有していれば、もうひとりは所有していなくても遊べる”フレンドパス”機能も引き続き採用されているのもうれしい点だ。 バグで交わってしまうSF未来と魔法ファンタジー世界 『Split Fiction』は未来のSF世界を舞台にしており、この世界ではとある企業がユーザーが想い描く”空想ストーリー”を再現するシミュレーターを提供している(VRのような物)。 しかしこのシミュレーター、じつはユーザーのアイディアを盗んでしまうという悪質な性能を隠して公開されている。 主人公はMioとZoe。『A Way Out』は牢獄の同居人、『It Takes Two』は夫婦というつながりがあったが、MioとZoeはそれまで出会ったことも話したこともない赤の他人だ。 ただふたりとも、作家(小説家?)であり、 自分の本を世の中に広めたいという共通の想いを持っている。ちなみにこのふたりの名前はJosef氏の愛娘から取られている。 『Split Fiction』のストーリーは、本来はひとり用のシミュレーターなのに、なぜかMioとZoeがお互いそれぞれのシミュレーション世界に行き来できてしまうというバグのせいで、本の内容が破綻してしまう。 なぜならMioの本はハイテクSF作品なのに、Zoeの本は魔法のファンタジー作品なのでジャンルが合わず矛盾してしまうからだ。そのため、自分の理想の本が体験できないからバグを解決しようと協力していくのが目的となっている。 アクションが気持ちいいぞ! 今回の試遊ではディレクターのJosef Fares氏といっしょにいくつかのステージを体験させてもらった。 まず最初にプレイしたチュートリアルステージでは操作方法を学んだ。 基本的にサードパーソンアクションの『Split Fiction』は、『It Takes Two』とくらべるとアクション寄りの構成になっている。 主人公の共通アクションは二段ジャンプ、ダッシュ、エアダッシュのほかにグラップリングやウォールランといったものがあった。 チュートリアルステージがSFステージなので、どこかのレジェンズやなにかのフォールを思い出させる雰囲気だ。 つぎのステージではMioとZoeは共通アクションのほかにお互いに独自のアビリティを使えるようになっていた。 MioはSFらしい刀でオブジェを斬れるようになり、Zoeは念力のようなものでオブジェを動かせる。『It Takes Two』ではステージが進むと新しいギミックで新鮮なゲームプレイを楽しめるが『Split Fiction』も同じ系統だ。 『It Takes Two』は人形を操作していたのでアニメーションにカートゥーンらしさがあったが、『Split Fiction』は人間なので動作がもっと人間らしく軽やかでキビキビしている。 これは常時60FPSの恩恵によるものだ。 『It Takes Two』ではUnreal Engine 4を使用し、『Split Fiction』でもUnreal Engineを独自カスタマイズしている。 筆者はMioを操作していたのだが、特定の床や壁のパネルでは重力を操作して落下するように移動ができた。移動先のパネルがMioにとっての新しい床(地面)になるため、たとえばそれまで画面左にあった壁が画面下の床になるようにカメラの向きが90度だったり180度だったりとぐるんぐるん動き回る。 一方でZoeは重力操作できず床はずっと固定されているのでカメラも固定されている。 ところがこのゲームはつねに画面を分割しているので、筆者側の左画面は視点がコロコロ変わるのに対し、ZoeをプレイしていたJosef氏側の右画面は動かないので、不思議でおもしろい体験をさせてもらえた。この体験はまさに『It Takes Two』のDNAを引き継いでいる証だろう。 べつのステージではZoeのファンタジー世界が舞台となり、Mioはゴリラらしきものと4足歩行の魔法生物、Zoeは巨大な木の生物に変身できるようになっていたり、お互い性能が違うドラゴンにも変身したり、またべつのSFステージではMioが群体のドローンを操作して自分のエクソスーツに変身させていた。 ん? エクソスーツ? 讃美歌が聞こえる……。 『Split Fiction』はメインストーリーの途中でちょっとしたミニゲームのサイドコンテンツも遊べる。たとえばサードパーソンアクションが基本のこのゲームが突然2Dのペーパーライクになったり、砂漠の中にいるサメに襲われないようにお互いタイミングをあわせて鐘を鳴らして次の足場に飛び移るプラットフォーマーになっていたり。 とくに筆者のお気に入りはふたりが豚になるステージ。豚になって何ができるかと思ったらなんとオナラで空を飛ぶのだ。 飛べない豚はただの豚というが飛び方がよりにもよってオナラである。 まさにJosef氏の真骨頂だろう。 このようにサイドコンテンツはバリエーションがとても豊かだ。しかも、かならずムービーシーンも挿入されていおり、いっさい手を抜いていない。サイドコンテンツは無視しても構わないものだがどれも遊びたくなるほど魅力的だ。 そして、試遊の終わり際に最終ステージを少し見せてもらえた。 Josef氏が「ネタバレは禁止ですが、このステージがどれだけ最高かはしっかり書いてくださいね!」と念押ししてきたその仰天ギミックに、筆者は驚きと笑いが止まらなかった。本当にすごいことをしているのでぜひとも体験してほしい! あー早く『Split Fiction』をまたプレイしたい。それまでに友達見つけなきゃ。 『Split Fiction』では友情の絆を描く ここからはHazelightの代表ジョセフ・ファレス氏(文中ではジョセフ)とのインタビューをお届けする。 ーー『Split Fiction』を遊んでみて『It Takes Two』のDNAを色濃く感じられました。 本作はどのようにして差別化したのでしょうか? ジョセフ: 『It Takes Two』と『Split Fiction』はどちらも協力プレイ型アクションアドベンチャーですが、前者はプラットフォーマーよりのアクション性を重視していました。 そこで『Split Fiction』ではよりサードパーソンアクションらしいアクション性を追求しようということで、同じようなゲームだけれど違うゲーム体験を提供できるようになりました。 ーーこれまでの作品では“絆”について描かれてきましたが本作も同じでしょうか? ジョセフ: 『A Way Out』では脱獄囚同士の絆、『It Takes Two』では冷めきった夫婦の絆を描きましたが、『Split Fiction』では赤の他人が友情をは育む絆を描いていきます。 そのため、MioとZoeそれぞれのキャラクター性もしっかりと作り込みました。 ちなみに、ふたりの名前は私の娘たちから採用しました。 ーー今回も画面分割型なのでふたりプレイ前提ですがクロスプレイ対応ですか? 前作はフレンドパスがあれば縦マルチ(PS5とPS4、XSX|SとXbox One)はできましたがプラットフォーム超えはできませんでした。 本作はどうなるのでしょうか? ジョセフ: クロスプレイは対応ですがフレンドパスのほうはEAと確認中です。 ーー本作はEA PlayやGame PassでDay 1配信の予定はありますか? ジョセフ: いまのところはサブスクサービスでDay 1配信の予定はないです。 ーーThe Game Awards 2024でお披露目すると同時に発売はたったの3ヶ月後という異例のスパンですよね。開発期間はどれくらいだったのでしょうか? ジョセフ: 『It Takes Two』が発売した直後から開発をスタートしたのでだいたい3年半ほどですね。 ーーこの試遊ビルドが洗練されている理由がほぼ完成しているからだとわかりました。 アクションもですがグラフィックもとてもいいですね。 『It Takes Two』と同じUnreal Engineに見えますがこれはUE5ですか? ジョセフ:おっしゃるとおりUnreal Engineを引き続き採用しています。 ただ、UE5を土台にして私たちがかなりの独自カスタマイズをほどこしているので、内部ではHazelightの名前を取ってHaze Engineと読んでいます。 ーークリアまではどれくらいの時間を想定していますか? ジョセフ: 『It Takes Two』とだいたい同じくらいの13時間程度です。サイドコンテンツを含めたらもっと長くなりますが、サイドコンテンツをプレイするかは自由です。 ーー最終ステージのアレ、とてもすごかったですね。開発ではどんなことに苦労しましたか? ジョセフ:] いや本当にあれはもうトライアンドエラーを何度も何度も繰り返してようやく理想の形で実現できたんですよ。すべての面で苦労しましたよ! あれこそまさにHaze Engineだからできた内容ですね。 あ、念押しですが内容は書かないでくださいね!? でもちゃんと最終ステージはすごいとは伝えてくださいね! ーーもうひとつすごい点といえばオナラで飛ぶ豚でした。 あれはハイになって思いついたんですか?(笑) ジョセフ: 私たちはいつも作品を作るときに「メチャクチャなことをしよう!でもゲームは破綻させない!」という約束をしています。 その結果あの豚が生まれてしまいました笑。 それもこれもHaze Engineのおかげです。ストーリー的には子供の頃につくった話が基になっているからあんなことになってしまっています。