「私用スマホ」ヤクザの世界でも“持ち込み禁止”の動き…「情報漏洩対策のため」一般企業なら“制限”どこまで許される?
指定暴力団・稲川会が傘下組織に対し、定時直参会・理事会で稲川会の所有する会館に集まる際にはスマホや携帯、スマートウォッチを持ち込まないようにとの通達を出したことが3月13日、NEWSポストセブンで報じられた。 指暴力団という特殊な組織ゆえの措置のようにも思えるが、最近は一般の企業でも情報漏洩対策などセキュリティの観点から私用スマホの持ち込みを禁止している部署・会社が存在している。 平均年収2000万円超で知られる工場向けセンサーや測定器などのメーカー「キーエンス」でも勤務時間中の私用スマホの利用を禁じているという。
ルール作りと社員への周知が重要に
ヤクザの世界であれば“組の言うことは絶対”なのかもしれないが、一般企業の場合は私用スマホの持ち込みをどこまで制限できるのだろうか。 企業法務や労働問題に詳しい勝又賢吾弁護士は「会社側が従業員にスマホの持ち込みを禁止するのであれば、合理的な目的の範囲内で、スマホを持ち込んではいけない場所や時間をルール化し、違反した場合に課せられる処分を定めておくことや、そうしたルールを就業規則等として労働者に明確に示しておくことが重要であると考えられます」と指摘する。 「職場のパソコンで、就業時間中に私用メールを送受信していた労働者に対する解雇処分の有効性に関する裁判例の中での判断ではありますが、 『労働者は、労働契約上の義務として就業時間中は職務に専念すべき義務を負っているが、労働者といえども個人として社会生活を送っている以上、就業時間中に外部と連絡をとることが一切許されないわけではなく、就業規則等に特段の定めがない限り、職務遂行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけないなど社会通念上相当と認められる限度で使用者のパソコン等を利用して私用メールを送受信しても上記職務専念義務に違反するものではないと考えられる』 とした裁判例があります(東京地判H15.9.22 グレーワールド事件)。 この裁判例では、従業員に就業時間中の私用メールを禁止する旨の就業規則や業務命令が定められていなかったことや、労働者が職場のパソコンで送受信していた私用メールが1日あたり2通程度であったことから、職務専念義務に違反したとはいえないと判断されました。 反対に考えると、就業規則等でルールが定めてあり、職務遂行に支障が生じている場合には職務専念義務違反になることがある、ということにもなります。 ですから、ゲームをしたり私用の連絡を取ってばかりいて、業務に支障が出ることを防ぐ、または、会社の機密情報が外部へ漏洩することを防ぐといった合理的な目的のためであれば、就業時間中の私用スマホの使用や職場への持ち込みを会社側が禁止すること自体は認められ得ると考えられます」(勝又弁護士)