なぜ井岡一翔は元4階級制覇王者ニエテスとのリベンジ戦に「必ず勝つ」と断言できるのか…第二子誕生予定と名トレーナーの来日
さらに強力援軍の合流も決まった。新型コロナの蔓延で、ここ2年間は、ジムのある米国から来日できなかったサラストレーナーが7日に来日することが決まったのだ。ここまでもスパー映像を見てもらいながら、日米間でコミュニケーションをとってきたが、最終調整でのチェックや、試合中の臨機応変なアドバイスなど、サラストレーナーの「いる、いない」の差は大きい。 井岡も「今までは自分を作り上げていかないといけない時間だったが、残りの時間で(ニエテスの)映像を見て、サラスさんや修平先輩(トレーナーの佐々木氏)と話す中で、お互いの意見や意思を確認したい」という。 ニエテスとの前戦では、どちらも決め手をかくまま12ラウンドが過ぎた。危ないシーンも逆にニエテスを追い詰めるシーンもなかった。 ニエテスは老獪に強弱を操り、遠距離ではステップワークと上体の柔軟性を使って、ディフェンスに徹して常に打たれないポジションをキープ。至近距離になると、一転、フックやアッパーを強打してジャッジに好印象を与えポイントを稼いだ。井岡の武器のひとつである出入りとカウンターの長所が消されていた。ニエテスは40歳になるが、井岡は、この戦術をとる限り年齢的な衰えはないと見ている。 3年半前の接近戦で井岡が劣勢に見えたのはまだスーパーフライ級に上げて2戦目でフィジカルに差があったことが影響している。また至近距離で頭の位置を丁寧に変えていくディフェンスの完成度もまだ発展途上だった。 しかし、敗れた翌年に、そのニエテスが防衛せずに返上したタイトルをアストン・パリクテ(フィリピン)と王座決定戦で争い10回TKOで日本人初の4階級制覇を達成。その後、4度の防衛を積み重ね、その中には年間最高試合に選ばれた元3階級制覇王者、田中恒成(畑中)を8回TKOで退けた試合もあり、円熟の井岡時代を確立した。この3年半で前回のニエテス戦では欠けていた2つのポイントも目に見えて進化してきた。 トレーニングにピラティスを取り入れ、代官山の最新鋭のジムでベースを鍛え、都内にみつけた約200mの坂道を走り込むことでスタミナも強化。技術面は、さらにブラッシュアップされている。本来の出入りに加え超攻撃的なインファイトも身につけた。 井岡は、この日の会見で、「3年半前に負けてから、いろんなことを見つめ直して成長し4階級制覇を達成してここまできた。ここまでの過程と成長に自信がある」と語った。 つまり3年半前の井岡とは違うのだ。 ニエテスは一筋縄ではいかない最強の挑戦者であることは間違いないが、井岡はリベンジ戦に向けて、こう宣言した。 「簡単な試合ではないことは間違いないが、KOで勝てたらいいと思うし、判定でも誰が見ても分かるような内容で差をつけた試合をしたい。必ず勝ってニエテスとの試合に決着をつけたい」 ニエテスに敗れてからの3年半の軌跡をよくよく見てくると説得力のある必勝宣言なのである。先月の会見では「どちらが真の4階級制覇王者かを証明する戦い」と語っていたが、進化した井岡の現在地がわかる試合になるだろう。11日の予備検診、12日の前日計量&調印式、公式会見を経て13日に4年越しの雪辱を果たす日を迎える。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)