石破新政権に「安倍カラー」払拭を期待する韓国
「わが国が敗戦後、戦争責任を正面から直視しなかったことが多くの問題の根源にある」 「日本にとっても韓国にとっても、このままでいいはずがない。 何とか解決してかつての小渕恵三首相と金大中大統領の時代のような良い関係に戻ってほしいと思う人は少なくあるまい」 韓国側が抱くのは、安倍政権が終わった後も日本政府内に根強く残る「安倍色」を石破氏がどれほど打ち消し、かつての「親アジア」的な外交に戻してくれるかとの期待である。
■「高市だけは勘弁」透ける本音 一方、高市氏はこれまでも歴史問題で韓国に厳しい言動が目立っていたが、とりわけ今回の総裁選を通じて、韓国政府が敏感だったのは靖国神社の参拝発言だ。 高市氏は今後の参拝について聞かれるたび、「内心、心の問題だ。これからも続けたい」「普段通り、淡々とお参りしていく」と述べ、首相に就任した後も参拝する考えを強調していた。 普段通りとなると、すぐ近くに控えるのは10月の秋の例大祭。韓国政府関係者らが、もし高市氏が勝利すれば、せっかくこれまで岸田氏との間で積み上げてきた緊密な関係が音を立てて崩れかねない、と危惧したのはいうまでもない。
靖国参拝関連では、石破、高市両氏とともに決選投票に進む可能性があると見られていた小泉進次郎氏にも、韓国側は警戒をゆるめなかった。 高市氏のように首相就任後の参拝を明言していなかったものの、選択的夫婦別姓を導入する法案の積極的な発言などで失った右派の支持をとりつけるため、靖国問題で帳尻を合わせるのではないかという懸念があった。 それに加え、韓国側に強く残るのは、父の小泉純一郎氏が現役首相時、韓国側の再三の要請に耳を傾けずに参拝を繰り返し、盧武鉉大統領(当時)との関係を急速に冷え込ませたという苦い記憶である。
■岸田氏の思いに大統領が「GO!」 総裁選の結果は石破氏の逆転勝利となり、対日問題などで大統領の諮問役を担う関係者は「歴史認識問題では石破氏に不安はないどころか、むしろ岸田氏時代より良くなるとの期待が膨らむ。『岸田ロス』が広がっていた大統領周辺にとって、朗報であることは間違いない」と話す。 岸田氏は総裁選への不出馬を表明した後の2024年9月、尹氏に別れを告げに行くかのようにソウルを訪ね、首脳会談に臨んだ。日韓で異例の「電撃訪問」と受けとられたが、実際には同年5月にソウルであった日中韓首脳会談(サミット)の終了直後から、岸田氏は年内の韓国再訪に意欲をみせ、周囲に相談していた。