<センバツ2022・ともに咲く>広島商/下 毎日欠かさぬ日誌 考える習慣、プレーにも /広島
広島商の選手たちが入部以来、毎日欠かさず続けている習慣がある。その日にあった部活動や学校生活での出来事を振り返り、改善点を記す「野球日誌」だ。タイトルは「全国制覇へのシナリオそして人生」。日誌をとじたファイルには、目標達成に向けた選手たちの積み重ねの記録が刻まれている。 A4サイズの用紙には「練習・学校での成功体験」「今日をもう一度やりなおせるなら」「ヒントとなった言葉や出来事」などの項目が並ぶ。選手たちは帰宅後に書き込み、監督や部長が後日目を通す。ある選手の日誌では「バットを最短距離で出せなかった」と技術的な反省点から、「傘を貸してあげた」など学校生活での行いまで、書き込みは多岐に渡り、部員たちは思い思いにペンを走らせている。 日誌を始めたのは2018年に就任した荒谷忠勝監督(45)。「毎日継続することの喜びや苦労を学んでほしい」と、前任の呉商監督時代からの取り組みを母校にも持ち込んだ。「日誌を見ていると、一人一人の性格が表れて面白い」といい、練習で見えない選手の一面も垣間見えるという。 毎日20~30分日誌と向き合うという植松幹太主将(2年)は「今日よりも良い明日にするにはどうすればいいか、毎日考える習慣が付いている。考える癖は、野球のプレー中にも生きている」と話す。 この冬に、選手たちが自ら取り入れた習慣もある。3リットルサイズの容器に米を詰め込み、学校での昼食と夕方の練習中に食べ切るようにし、食事の量を増やした。21年秋の中国地区大会決勝で広陵に敗れ、選手個々の体格と、連戦を戦い抜く体力の不足を感じ、12月から取り組んでいる。 当初は食べ切るのに時間が掛かっていた選手たちも、2カ月かけて練習の「隙間(すきま)時間」で食べ終えるようになってきた。秋から体重を5キロ増やしたという佐藤大介投手(1年)は「以前よりも、投げるボールに体重が乗るようになった感じがする」と手応えを口にする。「体づくり」の効果は着実に出てきている。 甲子園で数々の名勝負を演じてきた名門にとって20年ぶりのセンバツの舞台。荒谷監督は練習で「甲子園で勝つことを見据えて、一つ一つ大事に取り組もう」と選手たちに語りかけている。コツコツと小さな努力を積み重ねて来た選手たちが、大きな飛躍を遂げる春が近づいて来た。【池田一生】