「はい、論破」は独善的、対立をあおる手法にも疑問 早稲田「雄弁会」が模索するタイパ時代の「議論のあり方」
●「石丸伸二さんの手法は少し疑問」
――あまり共感できない議論や対話の事例はありますか 小林さん「石丸伸二さんの手法は少し疑問に思います。公の場で対立をあおるような、いわゆる石丸構文や、安芸高田市長時代の政治手法は、政治に興味を持ってもらうためのパフォーマンスだと石丸さんは公言していますが、社会の分断が叫ばれている今において、健全な議論を生みません。 さらに、その発言を見聞きした、同調する人の考えが強化されていき、火に薪をくべるようになってしまう。社会に与える影響が甚大であることを自覚して、慎重に振舞うべきだと思います。ただ石丸さん自身は、弊会の新歓講演会に来てくださったことがあるのですが、とても盛り上げてくださり、懇親会でも学生をねぎらってくれて、本当に優しい方でした」 佐藤さん「野党の政策を巡るコミュニケーションのあり方が、既存の政党・政権の批判に終始するなど、建設的でないものが見受けられます。そういったコミュニケーションが、国会で行われていることに疑問を感じます」 平栁さん「ドナルド・トランプ元大統領は象徴的かなと思います。人格否定をする、根拠がないことを断定するなど、理想的な議論のあり方に反しています。しかも、影響力があるため、あたかも正しい言説であるかのように広まってしまうことも問題だと思います」 ――逆に、心を打たれた対話があれば教えてください。 小林さん「野田佳彦元首相の、安倍晋三元首相への追悼演説が、非常に素晴らしかったです。政党も政治的立場も異なるなかで、安倍元首相の良いところや人格を認めつつ、見直すべきところも指摘するという、まさにSNS社会においての対話や議論のあり方の、ひとつの理想形なのかなと感じました」
●雄弁会のX「炎上対策」とは
――SNSを運用する際、気を付けていることはありますか。 平栁さん「そもそも攻撃的な投稿をしないことが前提ではありますが、特定の人物や団体を批判する際は、言説に細心の注意を払うべきです。何らかの譲歩を入れるなど、受け入れられやすいような言い方を心掛けるのが良いと思います」 小林さん「雄弁会のXで情報発信する際は、万が一炎上して関係者に迷惑がかからないよう、複数人で内容を確認してから投稿しています。攻撃的なリプが来ることもありますが、基本的には反応しません。返信しても、健全な議論は発生しないだろうと判断したら、無視をする選択を会として取っています」