介護報酬2024年度改定 訪問介護サービス基本料減額で「事業継続難しい」現場から懸念の声 鹿児島
介護事業所の収入に当たる介護報酬の2024年度改定で、訪問介護サービスの基本料が減額されることに、ヘルパーらが懸念を強めている。高齢者の在宅介護を支える鹿児島県内の訪問介護事業所からは「収支悪化で事業継続が難しくなる」と悲痛な声が上がる。人手不足に加えて経営難で見切りをつける事業所が相次げば、高齢者がサービスを受けられない「介護難民」となる恐れもある。 【写真】「介護難民が出てからでは遅い。国は早急な対応を」と話す松下みゆきさん=鹿児島市西田1丁目
「調子は良さそうですね」。鹿児島市の団地に一人住まいの男性(90)宅を、ホームヘルパーの女性(70)が訪れた。中村さんに声をかけて、すぐにごみ出しの準備に取りかかる。 男性は足腰が悪く要介護2。週3回の訪問介護で掃除や買い物を依頼する。「訪問介護があるから生活できている。住み慣れた自宅で、できるだけ長く暮らしたい」と頼りにする。 20年以上介護職を続ける女性は「自宅での暮らしを望む人は多い。ヘルパーがいなければ、生活が成り立たなくなる事例がたくさん出てきそうだ」と話す。 今回の報酬改定で「生活援助(45分以上)」の場合、1回の報酬は2250円から50円下がる。霧島市の事業所のサービス提供責任者は「もともと高くない報酬でなんとかやっている。これ以上下がればとてもやっていけない」と憤る。 サービス提供範囲は車で30分圏内。高止まりするガソリン代の負担にあえぐ。近隣の事業所が複数閉めたため依頼は以前にも増して多いが、人手不足で断らざるを得ない。
県ホームヘルパー協会によると、引き下げにより年間100万円超の減収と試算する事業所もある。松下みゆき会長(61)は「このままでは撤退する事業所が増え、介護難民が出る恐れがある」と指摘する。ヘルパー1人が通常の勤務時間中に回れるのは1日4~5軒が限界だ。収益確保のために多くの依頼を受けようにも、ヘルパーの高齢化や人材難で増やすことは難しい。 地域福祉の推進役である各地の社会福祉協議会(社協)にとっても、介護事業の赤字は重荷となっている。訪問介護は人手不足や収支悪化で全国的に休廃止が相次ぐ。県社協によると、県内は23年6月現在35事業所で18年から9カ所減っている。 自治体の財政状況が厳しく、支援は必ずしも期待できない。「地域によっては民間事業者がなく、社協が撤退すれば受け皿がなくなる可能性がある」とする。 県内の高齢者は都市部に比べ年金が少なく、施設に入所できない人も多いと見られる。訪問介護はこうした人たちの地域での生活を支える。松下会長は「団塊世代が後期高齢者になる2025年まであと1年。国は住み慣れた場所で高齢者を見る、という方針ではないのか」と引き下げの見直しを求めている。