公明、国民民主の勢いに乗じて接近 「年収の壁」解消へ積極姿勢 自民は財源懸念
公明党が、先の衆院選で議席を4倍に増やして国会のキャスチングボートを握った国民民主党の勢いに乗じ、所得税や社会保険料が発生する「年収の壁」の解消に取り組む姿勢を鮮明にしている。働き手の確保や所得増につながると見込むためだが、連立与党を組む自民党内にはなお財源確保への懸念が強い。公明は、自民と国民民主の間でバランスを取りながら政策実現を図ることになりそうだ。 「(年収の壁などの)税のことは今後、税の担当者が議論を重ねるが、道筋を確認できた」 自民、公明と国民民主による3党の政策協議が行われた12日、公明の岡本三成政調会長は記者団にこう語った。公明は従来年収の壁の解消策を訴えてきた。先の衆院選の公約では「年収の壁を意識せずに働くことができるよう、(岸田文雄政権が策定した)『年収の壁・支援強化パッケージ』を着実に実行する」と掲げた。 このため、公明は年収が103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」対策を最優先事項に掲げる国民民主の主張に理解を示している。103万円の壁の議論をきっかけに、公明が重視する社会保険料の納付が必要となる「106万円の壁」や「130万円の壁」など年収の壁全体の見直しを進めるためだ。公明幹部の一人は「私たちのやりたい政策を進めるチャンスだ」と意気込む。 国民民主も公明の接近を歓迎する。玉木雄一郎代表は12日、国会内で公明の斉藤鉄夫代表らと面会し「生活者を重視しているところは非常に一致点が多い」と秋波を送った。別の国民民主幹部は「(公明とは)表では3党での協議を進めているが、裏ではさまざまなルートで話ができている」と余裕たっぷりに語る。 公明と国民民主の接近に懸念を深めるのが自民だ。自民内には、国民民主が103万円の壁の解消策として訴える非課税枠の178万円への拡大で大幅な税収減につながるとの懸念がぬぐえていないからだ。小野寺五典政調会長は10日のNHK番組で「財源がなくなるという心配がある。まずそこを議論しなければならない」と懸念を示した。 自民中堅はこう漏らす。
「国民民主は自民と公明を各個撃破する戦法をとっている。うまくやられてしまうかもしれない」(長橋和之、深津響)