<球児のために>2020年センバツを前に 地域の指導力 成長促す強力OB
「もうちょっと思い切って腕を振ってごらん」。高岡商(富山県高岡市)のブルペンで、投手の背後から厳しい視線を送る竹島彰伸さん(52)=富山市=は、1999年に廃部となった社会人野球「北陸銀行」の元エースだ。2019年まで3年連続で夏の甲子園出場を果たした同校。全国の強豪と渡り合うチーム力の育成には、地元の指導力が欠かせない。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 右のサイドから繰り出すキレのある変化球で、都市対抗野球に補強も含めて8回出場した。廃部と同時に引退したが、母校・高岡商からの依頼でコーチを引き受けた。当初は冬場だけなどの期間限定だったが、3年前から通年で指導し、毎週末に足を運ぶ。 昨夏のエース、荒井大地投手(3年)も竹島さんの指導で大きく成長した一人だ。18年秋にサイドスローに転向した荒井投手に、まず、サイドスローの長所と短所を教え、スリークオーターから徐々にフォームを矯正。球の高低の付け方、コーナーワークなどを丁寧に教えた。 もともと強気な荒井投手だったが、「とにかく自信を持たせることを心がけた。失敗しても大丈夫だと励まし続けた」。19年春ごろには制球、球速とも安定した。同年夏の甲子園では、決め球のシュートを武器に石見智翠館(島根)、神村学園(鹿児島)の常連校を相次いで破った。3回戦の履正社(大阪)戦は、竹島さんも甲子園で声援を送った。打ち込まれて敗退したが、堂々と勝負する姿がうれしかった。後日、本人からお礼の手紙が届いた。 「高岡商は県内の強豪なので、それなりに実力のある選手が入ってくるが、全国レベルの選手と比べて成長のスピードが違う」。基本の大切さを説き、プレー、考え方など、トータルで早く成長させることを重視する。日体大で体育教師の免許を取得しただけに、教えることも大好きだ。 高岡商には竹島さんのような外部コーチがOBを中心に約10人おり、各自の都合に合わせてグラウンドに顔を出す。しかし、公立高校の中には、制約のある外部コーチの受け入れに消極的な学校もあり、課題は多いという。 吉田真監督(37)は「投手を専門的な目線で指導してもらえる竹島さんの存在は大きい。高校、大学、社会人とエースを務めた一流投手の経験や感覚をこれからも生徒に伝えてほしい」と期待する。 「全国の強豪相手に堂々と戦える力を付けてあげたい」と竹島さん。母校の躍進を夢見て、これからも名投手の育成に力を注ぐ。【青山郁子、写真も】=随時掲載