円陣のために休日返上でやってきた巨人・萩尾匡也＝東京ドーム

【球界ここだけの話】4年ぶりのセ・リーグ優勝を飾った巨人が、21日のクライマックスシリーズ（CS）ファイナルステージでDeNAに熱戦の末に敗れ、2024年シーズンが幕を閉じた。歴史的大混戦を繰り広げたペナントレースを勝ち抜いた中、グラウンドのプレーだけでなく、若武者たちの試合前の声出しも際立った一年だった。 【写真】「ランドからやって来ました」骨折リハビリ中の巨人・萩尾匡也が試合前の声出しで東京ドームに登場 記憶に新しいのは、CSファイナルステージでのこと。崖っぷちに立たされたチームの嫌な流れを変えたのは、2年目・萩尾のユーモアたっぷりの円陣だった。3位・DeNAに3連敗を喫した18日夜。左手の骨折でリハビリ中だった2年目外野手の携帯電話が鳴った。着信の相手は、亀井1軍外野守備兼走塁コーチだった。 「明日、17時半に東京ドーム来いよ」 左第5中手骨頭骨折中だったムードメーカーは、自身に与えられた役割をすぐに察した。負ければCS敗退となる19日の第4戦で、雰囲気を変える救世主として招集がかかった。 当日は、川崎市のジャイアンツ球場でのリハビリを終えてから、円陣のために東京ドームに駆け付けた。「『声出し』のために（よみうり）ランドからやって来ました。多少長くなるかもしれません」と書かれた紙を首から下げ、ピンク色のサングラスを着用し、拡声器も持参した。「あと2勝分、円陣の用意をしているので絶対に勝ちましょう」と叫び、ナインの爆笑を誘った。そこから2連勝と反撃の勢いを声出しでつくった。 シーズン中にも同じような出来事があった。優勝争いが佳境に入った9月。優勝へのマジックナンバーが点灯した19日のDeNA戦（東京ドーム）で萩尾と同期入団の高卒2年目の浅野が、試合前の円陣で声出しを担当。休養日に都内の神社で自費購入したお守りをナインに配るなど、〝仕込み〟を施したクオリティーの高い円陣芸で士気を高め、チームの一体感を強めた。 優勝祝賀会で山口オーナーが「（今季）印象に残っているのは…」と切り出し、「マジックが点灯した次の日、浅野君が声出しの役目をして、真ん中でマジックペンを2本取り出して、マジックは水性じゃなくて油性でいこうと。少し前の敬老の日では、きょうは敬老の日です。おじいちゃん、おばあちゃんに感謝して今日は勝ちましょうといった後に、きょうは早く〝けえろう〟とやった」と参加者に紹介したほど。のちに〝縁起のいいシーン〟として、10月のキービジュアルの背景にも採用された。 声出し一つでチームの雰囲気は変わる。試合前の円陣で見せた若手たちの明るさが、阿部巨人の雰囲気の良さを象徴したシーンだった。（樋口航）