徴用工問題は長期化する? 打開のカギは他問題との「切り離し」
日韓両国が対立し、膠着状態が続く中、1年3か月ぶりの日韓首脳会談が行われました。今後の日韓関係において何が重要になるか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】「少女像」展示中止が波紋 そもそも「慰安婦問題」とは?
具体的な解決策には至らなかったが
12月24日午後、安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領による日韓首脳会談が、中国・四川省の成都で開かれた日中韓3か国の首脳会議にあわせて行われました。正式の首脳会談としては昨年9月以来、およそ1年3か月ぶりでした。
安倍首相は会談の冒頭、「日韓両国はお互いにとって重要な隣国どうしであり、北朝鮮問題を始めとする安全保障に関わる問題について、日韓、日米韓の連携は極めて重要だ。私としては重要な日韓関係を改善したいと考えており、きょうは率直に意見交換したい」と述べました。 文大統領は「両国の懸案を解決するためには直接会って、率直に対話を交わすことが最もよい方法だと考えている。外交当局と輸出管理当局の間で懸案解決のための協議が進められている。両国が向き合い、早急に賢明な解決策が見いだされることに期待している」と述べました。 会談時間は約45分であり、両国間の懸案について具体的な解決策を見出すには至りませんでしたが、両首脳の発言は積極的なものであり、悪化している日韓関係を改善する糸口を作りました。それが今回の会談での最大の意義だったと思います。
文大統領の発言に日本側への一定の配慮?
これまで、両国関係を悪化させてきたのは徴用工問題と韓国に対する輸出規制問題でした。 対韓国輸出規制については、すでに局長級協議が始まっていましたが、今回の首脳会談で文大統領は「(日本が規制強化を発表した)7月1日以前の水準に早く戻らなければならない」と訴え、これに対し安倍首相が「今後も輸出当局間の対話を通じて問題の解決を図る考えを示した」と、韓国大統領府は伝えました。今後、両国は輸出当局間の対話を通じて問題の解決を図るとの方針を確認し合ったとみてよいでしょう。日本政府は「緩和ではない」としていますが、20日にレジスト(感光材)に関する運用を7月の規制強化発表以来、初めて見直しています。 一方、徴用工問題については、安倍首相は会談後の記者会見で「国家間の約束である日韓基本条約と日韓請求権協定は守らないと関係は成り立たない。韓国は日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを作ってもらいたい。徴用工問題は韓国側の責任で解決策を示すよう強く求める」と文大統領に求めました。従来の日本側の発言と比べると、国際法の順守の点ではこれまでの主張の繰り返しでしたが、徴用工問題解決の責任は韓国側にあるという点では新たな主張でした。 これに対し文大統領は「この件についての韓国側の立場は繰り返さないが、この問題の解決の重要性については認識しており、早期に問題解決を図りたい」と述べました。この発言には、日本側に対する一定の配慮がうかがわれましたが、日韓の話し合いはそれ以上進展せず、今後、外交当局間で協議を続けることになりました。