【WEC】魔コーナー先の直線で大事故、赤旗中断…異例“延長戦”でポルシェV トヨタ6、7位
<自動車・世界耐久選手権(WEC)第3戦>◇決勝◇11日◇ベルギー:スパ・フランコルシャン・サーキット 終盤での大クラッシュにより、一時は中断したまま終わるかと思われた波乱のレースは、まさかの“延長戦”に突入した。12号車ポルシェが優勝。6号車ポルシェが2位、50号車フェラーリが3位だった。 現行WECのスパで、昨年まで前人未到7連勝を果たしていたトヨタ勢は、連覇記録を伸ばすことができなかった。7号車トヨタ(マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ニック・デ・フリース組)が6位、8号車トヨタ(セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮組)が7位でゴールしたが、7号車がGT車両との接触で5秒ペナルティーとなり、8号車と順位が入れ替わった。 GT3マシンで争われるLMGT3では、91号車ポルシェがクラス優勝した。 ◇ ◇ ◇ 50号車フェラーリが予選、ハイパーともにトップタイムをマークし速さを見せつけたが、予選後の車検で車両最低重量違反が発覚し、タイムを抹消された。2番手の5号車ポルシェが繰り上がりでポールポジションを獲得した。 8号車トヨタは予選で2番手タイムをマークし、ハイパーポールへ進出するが、そこで順位を落とし、7番手タイム。。だが、50号車フェラーリのタイム抹消で繰り上がり、8号車は6番手、7号車は14番手からのスタートとなった。 決勝は、接触なくクリーンなスタート。トヨタ8号車はポジションを下げる。5周目にはポルシェ99号車が5号車ポルシェを抜いてトップに立つ。 開始約1時間半、7コーナーから8コーナーへ差しかかる地点で、20号車BMWが38号車ポルシェに追突。38号車がスピンし、GTクラスの46号車BMWを巻き込んでクラッシュし、セーフティーカーが入ることになった。46号車は元2輪ワールドチャンピオンのバレンティーノ・ロッシを擁するチーム。 開始2時間半過ぎには、トップから99号車ポルシェ→51号車フェラーリ→5号車ポルシェ→50号車フェラーリ→6号車ポルシェ→93号車フェラーリ→12号車ポルシェと、ポルシェとフェラーリの“ネギ間”状態となった。 開始3時間半頃には51号車フェラーリがトップに立ち、開始4時間頃にはタイム抹消で下位スタートした50号車フェラーリが2位まで浮上し、フェラーリがワンツー態勢を築く。 開始4時間50分頃、99号車ポルシェとバトルを繰り広げる2号車キャデラックが、オールージュを駆け抜けた後の直線でポルシェを抜こうとした際、右側にいたGTクラスの31号BMWと接触。7速ギアで速度が上がっていたこともあり、コントロールを失ってスピンしながら31号車を巻き込みつつ激しくクラッシュし、赤旗中断となった。キャデラックはカウルのほとんどが吹っ飛び、ほぼモノコックだけになるという無残な姿となったが、ドライバーのアール・バンバーは無事だった。 スパ・フランコルシャンの代名詞であるコーナー、オールージュ。フランス語で「赤い水」を意味するその名は、このコーナーの下を流れる小川がその由来となっている。この川底は鉄分を含む地質で、川の水は赤さび色をしているという。 スパ・フランコルシャンは高低差が激しいコース。オールージュは坂を下り切ったところの左コーナーで、その先にラディヨンと呼ばれる上り坂につながる。坂の底のオールージュへ飛び込んだドライバーは、速度を上げて、左に曲がりながら上りへ変わるコーナーを駆け上がっていく。その際マシンが激しく底つきし、横跳びになることも少なくない。 赤さびによる川の色が由来だった「赤い水」という名のコーナーは、くしくも「血塗られた魔境」という意味をまとうことになる。1985年、WECの前身である世界耐久選手権第7戦スパ1000kmで、ステファン・ベロフがラディオンのコンクリートウォールに激突して死亡。2019年には、FIA F2選手権第9戦レース1で、アントワーヌ・ユベールがラディオンで発生した多重クラッシュに巻き込まれて死亡した。 中断の時点で、トヨタ勢は7号車が5位、8号車が6位。 レース再開へ懸命のコース復帰作業が続けられた。レース終了時刻が刻々と近づく中、驚きの決定が! 赤旗中断に入った残り1時間44分で“時間を止めて”レースを再開することになった! セーフティーカー先導の後、現地時間午後7時26分(日本時間12日午前2時26分)にレース再開。この前後に多くのマシンがピットイン、給油やドライバー交代を行った。 想定外のスプリントとなった残りレースは、疲弊しきった各車がヒートアップし、接触やコースアウトが続出した。 夕闇迫り、ルマン24時間レースの日没セッションのようにヘッドライトを点灯し走るマシンたち。大波乱のレースは、ハーツ・チーム・ジョタの38号車ポルシェが制した。