eプレミア12『パワプロ』世界大会で日本のショーラ選手が優勝! イチロー「興奮しました」。岩隈久志&たいじも東京ドームで熱戦を語る
2024年11月23日、東京ドームにてKONAMIの『WBSC eBASEBALL パワフルプロ野球』(WBSC パワプロ)を使用した世界大会“ヒューガン WBSC eプレミア12 2024”決勝戦が開催された。 【記事の画像(10枚)を見る】 本大会は、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の主催で行われたeスポーツの世界大会。2024年4月から世界各国で予選が行われ、本大会出場選手12名が決定。オープニングラウンド、スーパーラウンドを勝ち進んだ日本のショーラ選手と、チャイニーズ・タイペイのDashu選手が決勝戦へと勝ち進んだ。 開会式にイチローさんが登場 決勝戦に先立って行われた開会式には、シアトル・マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさんが登場。MCのパトリック・ユウさんに呼び込まれたイチローさんは、「今日は『パワプロ』の世界一を決めるeプレミア12の決勝戦に立ち会うために、東京ドームに戻ってきました」とコメント。 「ゲームのいいところは、いつでもどこでも楽しめるところ。ゲームも成長著しいですよね。見た目だけではなくて、動きのリアリティーですとか、“野球って頭を使うスポーツなんだ”ということを教えてくれる。すごく可能性のあるものだと感じています」と語った。 世界決勝戦らしい白熱した展開に! そして始まった決勝戦。試合は3イニングで行われる。 先攻は多数の国際大会で実績を残しており、2023年にシンガポールで行われたのオリンピックeスポーツシリーズでも金メダルに輝いている、実績十分の日本代表ショーラ選手。対して後攻は、チャイニーズ・タイペイ代表で予選通過者のなかでは最年長だという40歳のDashu選手。 そして、ショーラ選手の本大会での連勝をスーパーラウンドで止めたのがDashu選手だという、因縁のある対決となった。 Dashu選手。 先攻のショーラ選手は初回から1死満塁のチャンスを作り、犠牲フライで手堅く先制点を得る。解説のたいじさんが「ボール球を振らないところがいい。しっかり甘い球を待って打てている」とコメントする堅実な攻撃を見せ、3回表にも追加点を上げて4-0とリードを広げて最終3回裏へと突入。 最終回、4点差を追う後攻のDashu選手は先頭打者が三遊間を抜くヒットで出塁し、ワンナウトとなるも続く滝本がヒットで一死1・2塁に。さらに次打者の火野勇太郎からセンターオーバーのタイムリーヒットが飛び出し4-2と逆襲を開始する。 ツーアウトとなるもランナーは2塁に残り、一発が出れば同点という場面。Dashu選手は長打力のある浮見葉勘を代打に送るも、最後は2ボール2ストライクから外角低めに151キロの全力ストレートが決まり見逃し三振! ゲームセットとなりショーラ選手の優勝が決定した。 勝利の瞬間、雄叫びを上げたショーラ選手。 試合終了直後、「苦しい試合だったのですけど、最後、気合でピッチングして、優勝することができて本当にうれしいです。ありがとうございます!」と喜びのコメント。わずか30分足らずの試合だったが、極限まで集中力を使い切ったのかショーラ選手は疲れ果てた様子。しかし晴れ晴れとした表情で表彰式へと向かった。 表彰式 表彰式にはプレゼンターとしてイチローさんが再登場。3位決定戦を戦った選手を含め計4人に、ひとりひとり賞状を手わたした。1~3位の選手にはトロフィー、さらに優勝したショーラ選手には、ヒューガンより豪華オーストラリア旅行がプレゼントされた。 大会の感想を聞かれたイチローさんは、「僕も中で見ていたのですけど、興奮しました! ゲームってこんなに進んでいるのかと思いってびっくりしました。おめでとうございます」と、改めて各選手の健闘を称えていた。 試合直後のショーラ選手に直撃 ーーおめでとうございます。喜びの声をひと言お願いします!: ショーラ :ありがとうございます。本当に予選、ここまで長かったのですけど、しっかりと練習をがんばってきて、基礎の練習をしっかりやってきた成果、最終回のピッチングもいいピッチングができました。バッティングもコツコツとつなげられたのは、本当に日々の練習のおかげかなと思います。その練習が優勝という結果につながって、本当にうれしいです。 ーー2023年にはeスポーツオリンピックシリーズでも日本代表として戦い金メダルを獲得されていますが、今日とどちらが緊張されましたか? ショーラ :もう、今日ですね。まさか東京ドームで、大きなモニターに映し出されて、本当に大勢のお客さんに見られながらで、いままで以上に緊張はしたのですけど、それを力に変えることができてよかったです。 ーー表彰式では、イチローさんから賞状を受け取ったり、拍手されたりもしていました。イチローさんから自分が拍手を受けるシーンというのは、これまで想像したことはありましたか? ショーラ :ないですね!(笑) 僕も昔野球をやっていたのですが、父親がイチローさんの大ファンで、それが理由で僕も左打ちにさせられていたくらいで(笑)、僕も小さなころから見ていてすごく好きな尊敬する方です。そういった方からお褒めの言葉をいただいたり、拍手をいただいたりして、すごくうれしいです! たいじさん&岩隈久志さん&イチローさんのコメント 試合後、解説ゲストとして配信番組に登場していた、2018~2020年にはパワプロ・プロリーグの選手でもあった配信者のたいじさんと、東北楽天ゴールデンイーグルスやシアトル・マリナーズで活躍した岩隈久志さんにインタビューを行った。 たいじさん「ショーラ選手は総合力の高いプレイヤー」 ーー日本のショーラ選手が優勝という結果になりました。: たいじ :だいぶしびれましたね! 3位決定戦もそうだったのですが、痺れる展開になりました。2試合とも、最後の最後まで「なんとか1点を取ってやろう」という気迫、思いがすごく見えてハラハラする試合になりましたね。 ※3位決定戦スコアは1-2、サヨナラ勝ちでNEGRAY選手が勝利をあげた。 ーー最終回、2点取られて追い上げられたとき、ドキッとしましたよね。: たいじ :ドキドキしましたね(笑)。あそこはさすがのショーラ選手も内心ではドキドキしながら、それを表に出さず、冷静な投球していたと思います。 ーーたいじさんは2018年からのパワプロプロリーグでも対戦経験があるかと思いますが、ショーラ選手の特徴や強みというのはどういったところでしょうか? たいじ :都合3年間、パワプロプロリーグで試合をしていたのですが、最初の1~2年は投球が非常にうまくて、ナイスピッチ率もずっと高かったのですが、3年目には首位打者を獲得するくらい、バッティングもすごく上達されていました。だから総合力すべてが高いという選手になりましたよね。本当に強いです。 岩隈久志さん「現実の野球と同様の駆け引きがある」 ーーeスポーツの観戦や解説をされることは珍しいかと思いますが、感想をお願いします。 岩隈 :初めてでしたが、すごく感動しましたね! 緊張感がすごくて。決勝戦というのもありますが、現実の野球と同様に、一球のミスも許されないという中で、つぎに投げる短い時間のあいだでの駆け引きがありました。なんでもかんでも打てばいいということではなく、進塁打やセンター中心に打ち返すといったようなシーンがあって、おもしろいな、深いなと思いましたね。本当に高い集中力と、長い練習時間を感じさせてくれる戦いでした。 ーー解説中に、最後のアウトローの出し入れというのがかなり印象に残ったというようにお話されていましたが、すこし詳しく伺ってもよろしいですか。 岩隈 :かなりすごかったですね。投球時の操作で、ストライクゾーンが見えないなかでほんのすこしスティックを倒して……あれって、ほんのちょっと(指を動かしながら)じゃないですか。あそこの出し入れ、(二度押しの)タイミングも取らないといけない中で、最後まであそこに投げきれたというのは「世界一を取るんだ」という気持ちがないと投げきれないと思います。 ちょっとでも気持ちが日和ったら、気持ちが弱かったら、ボールが甘く入ると思うんですよ。そこを投げきった。あと、その前の1アウト目をインハイで取っているんですよね。 岩隈 :あそこでインハイでアウトを取っているから、最後の最後、アウトローに連投しながらも、Dashu選手は「いつかインハイが来るんじゃないか」と思いながら待たないといけないので、最後見逃し三振になってしまったと思います。アウトロー、手が出ないところによく投げきりましたね。なかなか見られない世界を見させてもらったなという気がします。駆け引きがありましたよ。 ーーご自身が現役時代に本当にやられていたような駆け引きを……。 岩隈 :感じました、感じましたね。最後までアウトローに投げきるか、インハイに行くのか、一球見せるのか、落としていくのか。そういうことを感じました。 ーー実際の野球とも似たような。 岩隈 :似たような深さを感じましたね。世界一を懸けた戦いだということを感じました。本当にあれって、(指を動かしながら)1ミリ、2ミリの世界じゃないですか。そこを投げきって決めたというのはかっこよかったですね。 ーー今日はeプレミア12の決勝戦が日本選手対チャイニーズ・タイペイの選手になり、この後リアルの試合でも同じ組み合わせですが、選手たちに何かありますか。 岩隈 :そっちはね、もう自分たちの野球をしっかりとやれば、結果はついてくると思います。日本の野球は世界一に近いレベルにあると思いますし、それを証明する場所だとも思いますので、自分のやるべきことをやってほしいと思います。 ーー本日、マリナーズでチームメイトだったイチローさんもいらしていました。イチローさんがeスポーツのプレゼンターをされるというのもすごい話ですよね。 岩隈 : 『パワプロ』で、ゲームであのスピード感や奥深さを体験でき、それがeスポーツとして成立していることで、世界でも流行っていくと思いますし、イチローさんがプレゼンターをやるくらい価値のある大会になっていると思います。今後も発展していって、たくさんの国の海外の選手が来たらよりおもしろくなると思いますし、期待しています! イチローさん「真剣に向き合って努力してきたことが感じられた」 ーー今回のeプレミア12のイベントのスペシャルゲストとして、観戦して最も驚いたことは何ですか? : イチロー :まず熱量がすごいですね。想定をだいぶ超えていました。 あとは、野球ゲームとして、その操作技術や戦略のレベルの高さには感心させられました。野球というのはもともと頭を使うスポーツ、頭脳スポーツで、9イニングに設定されたゴールにおいて、相手より1点でも多く奪い、1点でも失点を少なくするために、戦略や戦術を駆使する。そういった野球の本質、本来の楽しみが本当に表現されていたと思います。 また選手たちは、従来の野球と同じように、自分をプレイヤーとして高めるために、真剣に向き合って努力してきたことが感じられるものでした。観る人を魅了する、すばらしいゲームだったと思います。 ーー本日のような野球のeスポーツが、野球という競技にもたらす影響についてどう感じていますか? イチロー :近年、野球がなかなか身近な存在ではなくなってきているなかで、野球という競技のおもしろさを身近に楽しめるという意味で、野球ゲームはこれまでもこの競技に大きな功績をもたらしてきてくれたと思います。 僕も、昔は「eスポーツ」というかっこいい呼びかたではなかったですけど(笑)、楽しんできたひとりです。そしていまはスマートフォンでいつでもどこでも、しかも世界中の人と対戦することができますよね。こういうことによって、より多くの人がこの競技に興味を覚えて、楽しさを知ることは野球にとってすばらしいことですね。 ーー『パワフルプロ野球』や『プロ野球スピリッツ』などのゲームに、自身がキャラクターとして登場するイチローさんですが、野球選手にとってこういったゲームに登場することというのはどのような気持ちになるものでしょうか。 イチロー :それはもう名誉なことです。 プロ野球選手になったばかりのときは、目標として、「ゲームの中で自分を使ってもらえるようになりたい」と思っていました。 僕も子どものころに幾多の名選手をゲームで自分ごと化して遊んでいましたしね。いまは選手のことを知るツールとしても非常に大きな役割を果たしていると思うので、KONAMIさんには、ぜひ選手のことを正しく表現してほしいと思います(笑) ーー『パワプロ』も含め“eスポーツ”というくくりにおいて、世界大会が多数開催される時代になり、プロのゲームプレイヤーも数多く存在します。イチローさんが若いころにはなかった“プロゲームプレイヤー”という仕事について、どのような印象をお持ちですか? またカテゴリは違えど、長くプロ野球選手として活躍されたイチローさんから見て、“eスポーツ”のプロとして、長く活動するために大切なことをアドバイスするとしたら、どんなことが考えられますか。 イチロー :プロゲームプレイヤーという仕事はあまり深く知りませんが、プロと名の付く以上は、需要があるから仕事として成り立っていると思うので、その需要に応える自覚を持ってほしいです。そしてプロとして、長く続けるためには、るねに現状維持で満足せず、研鑽を重ねてつぎのレベルを目指すことが大切だと思います。 とくにゲームですから、プレイヤーの数も多いと思うので、アマチュアとプロの圧倒的な力の差を見せつけてほしいですね。 ーーeプレミア12のようなイベントを通じて野球振興に取り組むWBSCとKONAMIの役割についてどう思いますか? イチロー :WBSCとKONAMIさんの取り組みは、リアルでフィジカルな野球と、バーチャルの野球の架け橋となり、世界中の新しい世代のファンや選手にとって、すごく大きな刺激になると思います。 野球のおもしろさを伝えていく存在として、こうした両者が手を取り合うことは本当にすばらしい社会的な意義があるし、大きな力になると思います。 これからも、本日のような機会にはいっしょに野球を盛り上げていければと思います。