フランス生まれの「カフェオレボウル」展を開催。時間とデザインの旅へ/愛知
■そのデザイン性は、Tシャツ、イラストレーション、ブローチへ… ボウルのデザインにも大きな魅力を感じるという山本さん。大量生産ゆえ、絵柄も「ポショワール(ステンシル)」と呼ばれる文字や模様の部分を切り抜き、インクが通過するようにして簡単に付けたものがほとんど。 「だから多くが無名の人たちの作ったデザインに違いないですけど、長い時間を超えて人の心に届く魅力と広がりがあるんですよね」。 そう、本展示は「広がり」が大きなテーマ。カフェオレボウルのデザインの豊かさに惹かれ、モチーフでTシャツを作ってみたいと願ったことから生まれた企画で、山本直孝さんのマスキングテープを使ったボウルのイラストレーション、Linnea手作りのブローチへと、それぞれが創作のインスピレーションを広げた。名古屋を拠点に創作活動をするLinneaの高橋玲子さんは言う。 「カフェオレボウルのデザインは多岐にわたっていながら、シンプルなものが多くて私も好きです。ブローチのモチーフにしやすく、楽しくて80個もできました」。
おもに雑器として流通していたゆえ、デザイナーが誰だったかなどはさかのぼれないことがほとんどであるカフェオレボウル。でもそれゆえに、どんな人がどんな思いで作ったのか、空想をふくらませる楽しさも広がる。フランスの田舎町で暮らしの道具として大活躍だった頃には、いつかずっと未来に、カレーの香りがただよう名古屋の古民家カフェに身を置くことになろうとは予想だにしていなかったはずだ。ポップな色で壁を塗られた古い日本家屋の棚に、居心地よさそうにたたずむカフェオレボウルたち。「これまでどんな旅をしてきたの?」カレーを食べながら、そんなふうに語りかける休日も、よいものだ。 (編集プロダクションエディマート 大塚亜依)