フランス生まれの「カフェオレボウル」展を開催。時間とデザインの旅へ/愛知
名古屋市千種区の古民家カフェ「babooshka(バブーシュカ)CURRY & CAFE」にて、6月2日(月)まで、企画展「LE BOL-カフェオレボウルから広がるデザイン-」が開催中だ。菓子・料理研究家でありカフェオレボウル収集家でもある山本ゆりこさんのボウルコレクション約350点の中から厳選した11点を展示。さらにボウルのデザインにインスパイアされた2人の作家のイラストレーション、ブローチも並び、広がりのある企画となっている。 ■カフェオレを飲むためにフランスで生まれたボウル フランスではシンプルに「Bol ボル」とだけ呼ばれるカフェオレボウルとは、朝食時にコーヒー、カフェオレ、ココアなどの温かい飲み物を飲むために、フランスで生まれた器のこと。19~20世紀には、フランスの朝のテーブルに欠かせないものだった。パリでの居住歴も長く、フランスに関する多数の著書を持つ山本ゆりこさん。蚤の市に通うようになってボウルのかわいらしさに惹かれ、訪れるたびに好みのものを探すようになったという。もともと「一日の水分をすべてカフェオレでとっていた」という彼女にとって、カフェオレボウルとの出会いは必然だったのかもしれない。2005年には著書『カフェオレボウル』(六耀社)を出版。300以上のコレクションの中から選んだ約150のボウルひとつひとつが美しい写真と、出会いや思いが伝わるエピソードで語られるとともに、ボウルの歴史やフランスの窯元、またフランスのさまざまな地方のボウルを各地の魅力とあわせて紹介。集めることの喜びとともに、フランスという国の魅力が生き生きと伝わる、心躍る一冊となっている。雑貨ファンやフランス好きの支持を集めるとともにカフェオレボウルファンを広く増やし、2013年には新装版が発行された。
■フランスの田舎町で日常使いされていた唯一“自分だけの”器 カフェオレボウルの魅力について、山本さんは語る。 「私が集めているボウルたちは、19世紀頃から陶器工場や窯元で大量生産されていた決して贅沢品ではない雑器です。それなのに形もデザインもこんなにかわいいなんてすごいなあって」。 20世紀に入り、ボウルがさらに大量に作られるようになると、サイズも増え、大きいものにはフルーツサラダを盛ったり、小さいものには一人分のデザートやジャムを入れたり、賑やかにテーブルを彩るようになった。現在ではライフスタイルや食習慣の変化に伴い、カフェオレよりもシリアルを食べたり、アペリティフ(食前酒)用のつまみを盛るなど万能な器として使われている。フランスでも山本さんが集めているようなボウルは、「これ、おばあちゃんの家にありそう!」と言われるような、少し前の時代のものというイメージだ。しかしカフェオレボウルの原点はやはり、朝食のテーブルの上でたっぷりのカフェオレが注がれたのんびりしたたたずまい。昔はもっと硬かったパンやクロワッサンをカフェオレに浸しながら口に入れる。パン屑が散らばることなど気にせず、底に残ったわずかなカフェオレを最後のひとかけらのパンにしみこませて大きなスプーンですくって食べた。食器を持ち上げることはマナーに反するとされるフランス人が唯一、両手で持って使うのがカフェオレボウル。他人のものと区別して「自分のもの」が決まっているのもこの器だけだ。 「ずっと昔にフランスの田舎の農家で、おじいちゃん、おばあちゃんが日常の中で大切に使っている姿を想像すると、愛おしくなるんです」。