阪神・藤浪にクロスステップ論争
その上で、与田氏も、故障発生を危惧している。 「アマチュアは短期、プロは長期です。体への負担が違います。アマ時代に感じたことのない疲労が蓄積します。それにまだ19歳です。外国人選手は、クロスステップしても上半身が強く、肉体的な負担は感じませんが、発展途上の肉体ならば話は別。コーチ陣は細かく彼の体の状態や表情の変化をチェックしながら注意しなければならないでしょう」 そして、クロスステップのもうひとつの欠陥は、制球力がつきにくいということだ。 これは元阪神のチーフスコアラーを務めていた三宅博氏が不安視している点。 「インステップだと、抜け球、逆に指にひっかかりすぎるというボールが増える。たまたま球威で抑え込んでいるうちはいいが、他球団は、そういう投法から見にくいボールへの対策を練ってくるし、ここ一番での制球力が不安定だと、長いシーズンでどうしても貯金を作ることが難しい投手になってしまう」 与田氏も同じ話をしていた。 クロスステップの良さもある。そして将来を考えると問題点もある。 では、藤浪は、今後、どんな選択をすべきなのだろうか。 与田氏は「結果と本人の考え方がすべてでしょう」と言う。 「結果が出ているうちは、修正しないことがセオリーでしょう。ただ、今の結果を本人がどう総括しているか、また、結果が出なくなってきた時、本人がどう考えるのかということだと思います」 三宅氏は「将来的には、このままでは無理。プロ野球は研究されるものですから。進化、成長を常に考え続けること。どこかで修正を決断しないといけないでしょう」という考え。 だが、一方で阪神の元監督である岡田彰布氏は、修正に反対意見を持っている。 「一番腕の振れる位置で投げていて、それがクロスステップで、うまくシュート回転していて、右打者、左打者にそれぞれ脅威になっているだから、直せば逆におかしなことになって持ち味が死ぬやんか」 クロスステップを続けるべきか、はたまた修正すべきか。 ルーキーにこんな論争が起きていることこそ大物の証明かもしれないのだが。 (文責・本郷陽一/論スポ)