阪神・藤浪にクロスステップ論争
背中越しからボールが来る感覚
伝統の巨人―阪神戦での菅野vs藤浪のルーキー対決は見ごたえがあった。結果は6回を投げ無失点に抑えた藤浪が、阪神では江夏豊氏以来、46年ぶりとなる高卒ルーキーの対巨人戦初登板初勝利を成し遂げた。これで7勝4敗。防御率2.84の数字は立派だ。 しかし、藤浪を巡って野球界に、ある論争が巻き起こっている。 ステップする左足を三塁ベース方向に10センチ以上寄せて踏み込む、独特のクロスステップ(インステップとも呼ばれる)は武器なのか? はたまた、危険をはらんだ問題点なのか? という議論だ。 クロスステップすると、右打者は背中越しからボールが来るような感覚を覚え、腰が引ける。変則サウスポーや、外国人でクロスステップ投法をあえて取り入れている投手も少なくない。藤浪の場合リーチがあるから、なおその効果が大きい。 評論家の与田剛は、「僕も現役時代にボールに角度をつけるために、わざとクロスステップにしたことがあります。右打者はボールが体に向かってくる気になるんです」という。 日テレ系のスポーツ番組で江川卓氏は「まるでショートの守備位置から投げ込んでくるような角度が武器になっている」と評価していた。 しかも、クロスステップすることによって、ボールがシュート回転する。ナチュラルなツーシームのような小さな変化が打者のバットの芯を外すのだ。
故障と制球力への不安
しかし、その一方で某球団のローテーション投手が、こんな話をしていた。 「投げ方とボールの軌道は凄いんですが、体をどっか壊してしまいそうな雰囲気がします。ストレートがシュート回転するでしょう? 特に肘が危ないと思います。高卒で、体ができていないですから」 極端なクロスステップに対して故障の危険性を指摘する評論家は少なくない。評論家の与田剛氏は、そのメカニズムをこう説明する。 「つまり腰の回転と、股関節の動きは三塁側に向くのにボールを投げるために腕の振りはホームへ向かうので、いらない捻りの動きが加わってヒジ、肩、腰、股関節、膝に負担を与えるのです。ボールがシュート回転するのも、そのためです。子供に野球を教えるときには、やってはいけない投法として教えているものです」