森永卓郎氏が「SINIC理論」から読み解く、2025年以降の経済社会の姿 「自給自足に近い暮らしをするアーティストが爆発的に増えていく」イメージ
グローバル資本主義が限界を迎えるなか、2025年を占う1冊として、経済アナリスト・森永卓郎氏が選んだのは、中間真一氏・著『SINIC理論 過去半世紀を言い当て、来たる半世紀を予測するオムロンの未来学』(日本能率協会マネジメントセンター)だ。はたして、構造転換後の経済社会はどうなるのか。森永氏が同書を読み解き、考察する。
* * * 2025年の経済社会が大構造転換を起こす。そう考える専門家が急速に増えている。「グレート・リセット」という言葉は、いまやちょっとした流行語だ。 構造転換の背景は、半世紀続いてきたグローバル資本主義が限界を迎えていることだ。マルクスはいまから150年も前に資本主義の行き詰まりを予言した。【1】許容できないほどの格差拡大、【2】地球環境の破壊、【3】少子化の進展、【4】ブルシットジョブ(くそどうでもいい仕事)の蔓延の4つが、資本主義崩壊の理由だ。この4つがすでに限界を迎えていることに異論を唱える人はほぼいないだろう。 問題は、その後の経済社会がどうなるのかだが、誰もみたことのない世界のグランドデザインについては、百家争鳴の状態にある。ただ、私は、メインシナリオは、1960年代末に立石電機創業者の立石一真が提唱したSINIC理論になるのではないかと考えている、過去半世紀の構造変化をことごとく言い当ててきたからだ。本書は、そのSINIC理論の詳細な解説を行ったものだ。 SINIC理論では、2025年からの世界は、自律社会に変貌するとしている。その自律社会は、【1】自立、【2】連携、【3】創造の3本柱で構成される社会だ。これまでのグローバル資本主義では、地球規模の巨大市場を形成することで、最も生産コストの低い地域に生産を集約化して、コスト削減による成長を目指した。ただ、競争が地球規模に拡大したことで、格差は爆発的に拡大し、環境破壊は世界に広がった。 自律社会は、その真逆になるだろう。SINIC理論は、そこまで細かく描いていないが、世界に無数の小さなクラスターが形成され、クラスター内の循環が経済の基本となる。クラスター内では、市場原理より共助が優先され、クリエイティビティが付加価値の主役を担う。イメージとしては、自給自足に近い暮らしをするアーティストが、爆発的に増えていく。そうした変化が、新年から始まるのではないか。 ※週刊ポスト2025年1月3・10日号
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