「老後資金、一体いくら準備すれば…」お金の困りごとを回避するため、最低限知っておきたい〈ライフプラン上の重要ポイント〉とは【FPが解説】
適切な「老後資金計画」には、社会保険制度の理解が不可欠
老後資金の計画は、引退後の生活費の計算、資金形成、資産運用が中心になります。社会保険制度の理解も重要で、健康保険、年金保険、介護保険、労働保険が基盤となります。とくに会社員の健康保険は、病気や怪我、出産に対する給付を含み、高額療養費や出産育児一時金など、さまざまな保険給付が提供されるので、ぜひとも理解しておきましょう。 ●国民健康保険…自営業者、退職者のための公的医療保険 自営業者や退職後の国民健康保険は、公的医療保険の一環として大切な役割を担います。国民健康保険は、協会けんぽや健康保険組合に加入していない人向けの制度で、加入者は自ら保険料を支払います。保険料は所得や家族構成に基づき計算され、市区町村や国民健康保険組合が運営します。保険給付には療養給付や高額療養費などが含まれ、業務上の病気やケガもカバーします。 退職後は、任意継続被保険者制度を利用するか、国民健康保険に加入する必要があります。75歳以上になると後期高齢者医療制度に移行し、保険料の支払い方法が変わり、自己負担割合も調整されます。 ●老齢給付…「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の概要 老齢給付には、国民年金からの老齢基礎年金や厚生年金保険からの老齢厚生年金があります。 老齢基礎年金の受給要件としては、公的年金が二階建てであることを前提とし、その一階部分に位置する国民年金が、高齢期の生活の安定を図るために支給されるものです。老齢年金を受給するためには、資格取得期間が10年、つまり120ヵ月以上必要です。また、受給開始の資格年齢は65歳です。 国民年金の受給資格期間は10年で、これには保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間が含まれます。保険料納付済期間とは、国民年金の第1号被保険者としての加入期間中に保険料を納めた期間、第2号被保険者期間中の20歳以上60歳未満の期間、そして第3号被保険者としての期間を合わせたものです。保険料免除期間は、第1号被保険者期間中に保険料免除を受けた期間を指します。 老齢基礎年金の年金額に関しては、保険料納付済期間が40年、即ち480ヵ月ある場合、満額を受け取ることができます。2024年度の満額は81万6,000円、月額にして68,000円です。平均的な月収40万円で勤務していた人が40年間働いた場合、受け取れる年金は本人の老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金の合算額で、月額22万円程度の生活が想定されます。しかし、将来的にこの年金額が減少する可能性は高いです。 老齢基礎年金の具体的な支給額の計算では、40年間すべての保険料を納付していない場合、満額に対して調整が行われます。保険料納付済期間の月数に、調整された免除期間の月数を加え、その合計月数を480ヵ月で割った比率を用いて調整が行われます。 最後に、老齢基礎年金を受け取る際は、繰り上げや繰り下げ支給の選択肢があります。これにより、年金の受け取り開始年齢を調整することが可能です。 ●遺族給付の考え方と受給資格 遺族給付は、国民年金と厚生年金から支給される制度で、遺族基礎年金と遺族厚生年金が主要な給付です。遺族基礎年金は、亡くなった人が国民年金の被保険者だった場合に、その遺族に支給されます。受給資格は、亡くなった人が国民年金の被保険者であったこと、または老齢基礎年金の受給資格を満たしていたことが必要です。遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者が亡くなった際に、遺族に支給される年金です。こちらも特定の受給資格が必要となります。 遺族基礎年金の年金額は、配偶者に対して基本年金額が設定され、子どもがいる場合は加算があります。遺族厚生年金も、報酬比例部分を基に計算され、特定の条件を満たす遺族に支給されます。 ●年金受給の手続きの方法 年金受給手続きには、適切な請求が必要で、受給資格があっても手続きを行わなければ受給開始されません。 年金受給には税金の面も関わってきます。保険料や掛金は所得控除の対象となり、受給時には一定の条件に応じて課税されます。特に、公的年金給付は、障害年金と遺族年金が非課税で、老齢給付は課税対象となります。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄