【BCマイル】テンハッピーローズ・津村明秀に聞く 「まさか自分が…憧れのところで乗れるのはうれしい」
苦しい時期を乗り越えて…
――インタビューでは「GⅠを勝てないんじゃないかと思った時期もあった」と。GⅠに乗るために、ローカルから中央場所にシフトするタイミングがあったように感じます 津村 ありますね。2019年くらいですね。その年は前年より勝てなかったけど、勝てなくなるのは覚悟でした。でも、行かないとダメだな、と。ローカルの福島、新潟でメインが終わってGⅠをテレビで見ていて、悲しくなるというか、「自分はここで何をしているのだろう」って。GⅠを福島、新潟で見ていた。なんかそれは違うなと。 ――それで主戦場を移す決意をした 津村 福島、新潟で乗っていても、たまにGⅠに乗れることがあるけど、チャンスは少ない。チャンスを増やすにはどうしたらいいかと考えたときに、やはり中央で基盤をつくらないと、そういう馬たちに巡り合えないと思ったんです。もう、ある程度、勝てなくなるのは承知でいくしかないだろうと思いましたね。 ――今年は年明けから重賞を勝ち、GⅠも勝利 津村 中央に移っても、自分の中で確立したものができて、自信もついてきた。やはり移ってよかったなと。 ――19年ジャパンCではカレンブーケドールで2着。GⅠを意識するポイントになった? 津村 それも一つのポイントですね。あの年はGⅠを勝ちたいと一番思った年。本当に悔しかったです。悔しかったけど、この先もGⅠに乗り続けないと勝てるわけがない。どんなに人気薄でも乗らなければ勝てないので。その舞台に立てるようにしなきゃ、って思った。中央に移って、このまま突き進もうと思ったレースでもありました。テンハッピーローズも人気はなかったけど、出走していなければ当然、勝てなかった。これを機に毎年、GⅠを勝てるジョッキーになりたいですね。 ――デビュー21年目を迎えている 津村 他のスポーツで、この年齢はなかなか活躍できなくなる年で、38歳となるとベテランになりますよね。ただ、僕の中ではまだ気持ち的にも若いですし、これからと思っている。スタートというか、これからさらに、という気持ちです。海外で乗ったら、今度はまた海外で乗りたいと思うかもしれませんね。GⅠと同じで。すごくいい経験にはなると思います。楽しみです。楽しみしかないです。 ――自信がついてきたと話していましたが、どういうところを大事にしている? 津村 人それぞれいいところがあると思う。剛と柔なら僕は柔の方。柔らかいというか。強い、剛がいいときもあれば、僕みたいに柔がいいときもある。以前は、〝もっと強くなれなければ〟と思っていたけど、勝ちたいという気持ちはあるし、柔らかさ、自分のいいところは捨ててはいけないなと。馬へのあたりとか、そこが僕のいいところだから。そっちを伸ばす。いいところを伸ばせば、全体的にも大きくなる。そこは大事にしてますね。 ――それは経験を積む中で思ったこと? 津村 年齢を重ねて思いましたね。なかなか勝てないときに、他の人のマネをしたりしていたけど、やはりその人その人で違う。例えば同期の川田(将雅)はすごいし、マネしようと思ってもできない。僕はあんな性格でもないですから。ああいう性格もすごいし、うらやましいと思ったときもあったけど。やはり僕は僕で違う。 ――同期の川田騎手は意識する? 津村 昔は意識したときもありましたけど、今は上の存在ですからね。よく僕のことを気にかけてくれたりするので、意外とすごく同期のことを気にしてくれています。 ――今後の目指すところは 津村 一番は格好良く乗りたいと思っています。かっこいい、きれいだな、と思われたいです。豊さんみたいに。
三嶋 まりえ