【高校サッカー】帝京 国立で26大会ぶり歓喜!失点直後に「全員で笑え」伝統と革新が融合した80分間
◇第103回全国高校サッカー選手権1回戦 帝京2-1京都橘(2024年12月28日 国立競技場) カナリア軍団が復活の白星だ。開会式に引き続いて行われた開幕試合で、15大会ぶり35回目出場の帝京(東京B)が京都橘に2―1で競り勝った。同点に追い付かれた直後の後半35分にFW宮本周征(2年)が決勝ゴール。戦後最多タイ6度の優勝を誇る名門が伝統の勝負強さを発揮し、選手権では07年度以来17大会ぶり、国立競技場では準優勝した98年度以来、26大会ぶりの勝利を挙げた。きょう29日は1回戦の残り15試合が行われる。 時計の針が再び動き出した。帝京復活を告げるホイッスルが聖地国立に鳴り響く。イレブンは雄叫びを上げ、抱き合った。17大会ぶりの初戦突破。国立での勝利は実に26大会ぶりだ。当時の主将で、今年からチームを引き継いだ藤倉寛監督(44)は「選手より私の方が伝統を感じていた。こんな舞台で何十勝もしたり、優勝した経験は計り知れないと体感した1勝だった」と感慨を込めた。 大舞台から遠ざかっている間に、一時代を築いた堅守速攻から攻撃的なポゼッションサッカーに転換した。それでも帝京魂は確かに宿っていた。真骨頂は終盤だ。前半5分に奪った先制点を守り切れず、後半33分にセットプレーから同点に追い付かれた。その2分後、中盤のボール奪取から速攻を仕掛ける。最後は途中出場の宮本が仕留めた。失点直後、チームメートに「全員で笑え」と呼びかけたMF砂押大翔主将(3年)は「失点した後の笑顔は自分たちにしかない良さ。新しい帝京を出せた」と声を弾ませた。伝統と革新が融合した80分間だった。 歴史を刻んだ選手たちが大切にしている言葉がある。「勝利は義務ではなく欲求」。東京都予選の途中から、試合前のロッカールームで藤倉監督に伝えられてきた。砂押は「伝統の中で勝たないといけないという気持ちになっていた。ただただ自分たちが勝ちたいと、フレッシュな気持ちで試合に臨めるようになった」と明かす。この日は「選手権で国立だから、ドラマチックになっちゃうよ」とも言われた。その言葉通り、劇的な展開で開幕戦を制し、殊勲の宮本は「いざ黄色のユニホームを着たら、帝京魂が出る」と胸を張った。 ユニホームの左胸には、全国制覇を表す9つの星が刻まれている。指揮官は「成長した1試合。歴代のOBの方たちも大会を通してたくましくなった姿を見てきた。そういう伝統に乗っかりたい」と視線を上げた。合言葉は「10個目の星」。新生カナリア軍団の冬が幕を開けた。(坂本 寛人) ≪DFラビーニ頭で大会1号≫ DFラビーニが今大会第1号ゴールを決めた。前半5分、左CKから頭で叩き込んで先制。勝利を呼び込む一発に「うれしいです」と笑みがこぼれた。FC東京の下部組織出身で小学時代はFW、中学時代はサイドハーフなどをこなしてきた。現在はサイドバックだが、「ずっと点を決めたい気持ちはある。自然な流れの中から(得点を)決めたい思いもあるので2回戦で見せられたらなと思う」と得点量産に意欲を示した。 ≪大会勝利数は単独最多≫ 15大会ぶり出場の帝京が京都橘との開幕戦に勝ち、07年度以来17大会ぶりに勝利を挙げた。これで大会通算勝利数(PK・抽選勝ちを含む)を単独最多の81勝に伸ばした。2位は国見の68勝(全て首都圏開催の1976年度以降)で、同期間の66勝は最多の国見にあと2と迫った。帝京の優勝6度は、御影師範の11度に次ぐ歴代2位タイ。 ≪一時同点も無念≫ 京都橘は、2年連続の初戦敗退。後半33分にMF桐原が一時は同点となるゴールを決めるも、その2分後に決勝点を許した。終了間際にはMF執行の強烈なシュートが無情にもバーを叩き反撃もそこまで。7月には当時部員2人の不祥事で活動停止となるなど苦しい1年間を過ごした。選手のメンタルケアや対話に時間を割いてきた米沢一成監督は「彼らの良さは気持ちが切れなかったこと、次の行動をしてきたこと」と振り返った。