創設10年どうなる?ふるさと納税 総務省が対応に乗り出した「返礼品」問題
昨今、身近になったふるさと納税は、2008(平成20)年度にスタートしています。創設初年度のふるさと納税額は約81億円、件数は約5万3000でした。以降、ふるさと納税は低調がつづきましたが、2015(同27)年度にふるさと納税額は約1652億9千万円、件数は726万と急増します。ふるさと納税が急増した背景には、ふるさと納税のスキームがワンストップ化されたことが要因にあります。 返礼品競争がエスカレート、ふるさと納税批判高まる それまでは、ふるさと納税をした人が税額控除を受けるためにふるさと納税先の自治体から領収書を受け取り、それを確定申告時に税務署に提出。さらに、税務署は申告情報を居住自治体と共有し、居住自治体が翌年度分の住民税を減額するという複雑な流れになっていました。ワンストップ化によって、ふるさと納税における煩雑な手間が大幅に軽減されました。 こうしたワンストップ化が進められた時期に、ふるさと納税のポータルサイトも登場しています。ポータルサイトでは各自治体がふるさと納税の返礼品として贈っている牛肉や海産物などが一覧できます。 その頃から、テレビや新聞・雑誌などでもふるさと納税が頻繁に紹介されるようになります。それらをきっかけにして、返礼品目的のふるさと納税が急増したのです。各自治体も多額のふるさと納税を集めるために、豪華な返礼品を贈るようになりました。今般、それらが過熱し、高額な返礼品合戦とも映る状況になっているのです。
趣旨に反した高額返礼品が問題に
「ふるさと納税の返礼品は、自治体の裁量に任せられています。巷間、返礼品は納税額の3割までとも言われていますが、そうした基準を総務省が示したことはありません」と話すのは総務省自治税務局市町村税課の担当者です。 担当者は続けます。「しかし、一部の自治体が高額な返礼品を見返りにして、ふるさと納税を集める。それは、ふるさと納税の趣旨に反しています。それらを放置しますと、ふるさと納税という制度の信頼性が揺らいでしまいます。そうした流れに歯止めをかけるために、総務省は良識のある対応を求める通知を出したのです」。 本来、ふるさと納税は、進学や就職などを理由に若者が故郷を離れてしまい、それでも生まれ育ったまちを応援したいという気持ちに応えるための制度として発足しています。皮肉にも、豪華な返礼品を贈ることで多額のふるさと納税を集めているのは、過疎化が深刻になっている地方の市町村です。