「日本と中国の違いすら…」黒人侍“弥助”で炎上の仏ゲーム、問題は時代考証だけじゃない。東大生の考察は
ずさんな歴史考証
もちろん、ゲームなのでフィクションの設定で固めている可能性はあります。ですが、それ以外にも、「城内の畳が正方形」「家臣が当時一般的でなかったとされる正座をしている」「神社の境内で線香を炊く」など、日本について十分な検討と考証を重ねているとは考えられない描写が続きました。 他のアサシンクリードシリーズに目を向けると、ギリシアやエジプトを舞台とした作品では、しっかりと歴史考証に注意が払われています。教育向けバージョンの「ディスカバリーツアー」まで販売しており、史実に即した作品を作る能力はあるはず。 日本が舞台になった途端にこの有り様。手抜きと取られてもおかしくありません。
製作者は日本と中国の違いがよくわかっていない
『シャドウズ』には歴史的考証以外にも様々な問題があります。たとえば、同作に用いられているコンセプトアートに「関ケ原鉄砲隊」という実在する団体の旗とマークが無断使用されていることが発覚しました。 同団体はユービーアイソフトに抗議しましたが、数日後に無言で画像を削除しています。更に炎上した後日、ユービーアイソフトは関ケ原鉄砲隊に謝罪文を送ったようですが、問題となったコンセプトアートは、『シャドウズ』のコレクターズエディション版に収録予定となっており、2024年7月20日現在、販売自粛の声明は出ていません。 そのうえ、『シャドウズ』の日本向けトレーラーには、中国語と思われる繁体字の字幕がついていました。動画は既に非公開となっていますが、「製作者は日本と中国の違いがよくわかっていない」と自ら露呈したわけです。もちろん、公式からこれに関する声明は出ていません。 これらの問題によって、ユービーアイソフトの株価は一時15%近くも下落しており、世界中で不買運動、販売に反対する署名活動が行われています。
アジア人に対する差別感情か
アメリカの大学入試を中心に、いま人種差別が大問題となっています。もともとは白人優遇、黒人差別が問題視され、そこからアファーマティブアクション(積極的な改善措置)が起き、今ではそこの格差が是正されたとされています。ですが、次の課題としてアジア人に対する差別感情の存在が浮上しました。 私は、肌の色によって差別を受けた経験はありません。ですから、海の向こうで起きている「大学入試と差別」についても、対岸の火事のように受け止めていました。 ところが、今回の『シャドウズ』によって、アジア人に対する、うっすらとした差別のような無関心を感じさせられたような気がします。