【甲子園熱戦レポート│6日目】19試合目での大会第1号にもベンチは沸かず。東海大相模の“サイレント・トリートメント”の舞台裏<SLUGGER>
そして、もう一つ、サイレント・トリートメントになった理由がある。 主将で5番を打つ木村海達が言う。ちなみに、木村も部長が悔しいはずと才田ともに名前を挙げられていたうちの1人だ。 「自分たちも打ちたかったんで、先に取られちゃったっていうのはありますけど、そういうふうにしたっていうわけではありません。試合中はガッツポーズをしないようにしているんです。打った柴田もあんまり喜んでいなかったんで、ベンチもそういうふうにしました」 喜んでいないのではなく、喜ばないようにしたというわけである。これは原俊介監督になってからの東海大相模の方針として、感情表現を抑えるようになっているのだという。 才田も証言する。 「神奈川大会からやっていることは、どんなに良いプレーが出ても隙を見せずにやっていこうということです。ゲームセットと言われるまで集中しろと言われているので、ホームランは出たんですけど、ガッツポーズなどを出してしまうと、次のプレーの隙になってしまう。いつもやっていることをやれば勝てると思うので、控えるようにしています」 この試合を通して見ていても、確かに東海大相模の選手たちはタイムリーを打っても、ピンチで三振を奪っても、高校野球でありがちなガッツポーズや雄叫びをあげると言ったようなシーンはなかった。相手を慮りつつチームとして余分な感情の発露を抑える。勝利に向かって一つになるという意味に追いては非常に大事なことと言える。 原監督は話す。 「落ち着いて試合に集中をしよう。感情の欲求をあまり出さずにいこうというのは心がけています」 19試合目にして飛び出した大会初本塁打にも沸かなかった東海大相模のベンチ。 それははからずも、原俊介監督になって生まれた新しいスタイルを見せつける形となった。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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