映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』にみる原作の恐怖を回避する方法
人気ホラーゲーム「Five Nights at Freddy's」(以下FNaF)を原作としたホラー映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』が2月9日に公開された。これまで数多く公開されてきた大人気ゲームの映画化とどこが違うのか。ゲーム原作映画、ひいては原作あり映像作品の歴史を振り返りながら、本作のシンプルでありながら綿密に練られたストーリーの魅力について紐解きたい。
ゲームを映画にする10年
FNaFは、2014年8月にリリースしたPC向けホラーゲームだ。プレイヤーは、午前0時から6時まで廃墟化したピザレストランで働く夜間警備員。仕事内容は監視カメラのチェック、備品や動物ロボットの安全確認をするだけの簡単なお仕事だ。しかし、放置された巨大な機械仕掛けのマスコットたちが動き出し、遅いかってくる。プレイヤーは5日間、この恐怖に耐え抜き生き延びねばならない。対抗策は、ただ監視カメラをチェックし、警備員室のドアを閉めるのみ。しかも限られた電力で‥‥。 監視カメラを切り替えればアップで映り、急に動き出す巨大マスコットは恐怖でしかない。だるまさんが転んだ的なシンプルなこのゲームは、発売と同時に大ヒットを記録。数々のチャートを席巻し、すぐに続編が制作され、今日までに9つのゲーム、スピンオフ・ゲーム、小説3部作、アンソロジー・シリーズを含むグローバル・フランチャイズが誕生している。日本でも多くのファンを有し、兄者弟者、ガッチマンといった人気YouTuberにもプレーされ、ゲーム実況コンテンツとして高い再生数を誇っている。現在はSteamストアで購入できるほか、一部操作や演出が変更されているものの、iPad、iPhone、Android版、3DS、PS Vita、Nintendo Switch版も存在する。 当然、ハリウッド関係者でも注目を浴びたが、ゲームの開発者スコット・カーソンは作品の世界観を台無しにすることを避けるため、すぐに映画化プロジェクトに飛びつくことをしなかった。 ホラー映画の第一人者として名高い、本作の製作を手掛けるジェイソン・ブラムは、10年前にスコットと連絡をとり、1年近くかけて説得、8年かけて信頼関係を築き上げた。準備と製作期間中、ブラムは原作のゲームに忠実であり続け、カーソンのビジョンを信じ続けた。その結果出来上がった本作は2023年12月6日時点で、全世界累計2億8600万ドル以上を稼ぎ、ブラムハウス史上最高の興行収入を記録している。