【バスケ】久しぶりに「らしさ」発揮した琉球ゴールデンキングスの荒川颯、“刺激受ける選手”は… EASLの海外アウェー初勝利に貢献
持ち味の「激しいDF」と「コーナー3P」で存在感
荒川は第1Qの中盤からコートに立つと、チャンクィらに激しいプレッシャーを掛け、ストレスを与える。これを13分29秒の出場時間の中でひたすら継続した。狙いも明確だった。 「前半はファウルを使ってでもプレッシャーをかけていましたが、後半はチームファウルがかさんでいる中で、ギャンブルではなく、嫌なシュートを打たせようと思っていました。それができればこっちに必ず流れが来ると思っていたので、とにかく相手の前に立って、嫌やシュートを打たせることを意識していました」 第2Qはオフェンスで見せた。 このクオーターの開始4分過ぎから再びコートに立つと、素早いトランジションでファストブレイクの先頭を走り、岸本から受けた矢のような縦パスを受けてレイアップを沈める。さらに2本のコーナー3Pを決め切り、一時逆転に成功するなど存在感を示した。 「前半は少しハンドラーをしてターンオーバーをしてしまった場面もあったのですが、2番ポジション(SG)でプレーさせていただいているので、シュートはとにかく自信を持って打つようにしています。思い切り良くやることで自分の良さが出ると思うので、そこは意識しています。迷わないということですね」 3Pは3本中2本を成功させて8得点、1アシスト。ディフェンス面の貢献も大きかったため、3点差の決着という大接戦の中で、その選手が出場している時間帯の得失点差を示す「+/-」は「+1」だった。
マインドセットに変化「役割を増やそう、じゃなく…」
このハードなディフェンスとコーナー3Pは、練習生から契約を勝ち取った昨シーズン、荒川がプレータイムを増やした最大の要因だった。 しかし今シーズン、琉球がこれまでに行ったBリーグの9試合で、荒川はなかなか輝きを放つことができていない。新加入PGの伊藤達哉が負傷離脱してハンドラーを任されることも増えたが、安定感に欠ける。3P成功率は13.0%に低迷しており、調子が上がってこない。 ナチュラルボジションはSGであり、ボール運びなどPGの役割は適応が難しい部分もあるはず。荒川自身も「今シーズンに入ってから自分の役割がチームの中で変わっていく中で、自分の中でも消化できていないところがすごいあって…」と本音を漏らす。 だからこそ、ブラックベアーズ戦のパフォーマンスは、より「らしさ」が際立って見えた。背景には、もがく中で辿り着いたマインドセットの変化があったという。 「昨シーズンの結果は『ディフェンスで前から当たる』『コーナー3Pを打つ』という役割に絞ったからこそ出せたものだと思います。それプラスアルファで、今度はどれだけ役割を増やしていけるかというマインドで(今シーズンに)挑んでいたのですが、なんか『そうじゃないな』って思い始めたんです」 理由はこうだ。 「『役割を増やそう』と考えている時点で良いプレーができていない。ゲームの挑み方というんですかね。役割は増やそうとするものではなく、勝手に増えていくものだから、まずは自分ができることをやり続ける。そのマインドセットが今は一番しっくりきています。それが、自分を取り戻すために必要なやり方かなと思っています」 確かに、昨シーズンの荒川はそのようなマインドセットだったはずだ。学生の頃からオフェンス力で鳴らした選手だったが、琉球でディフェンス面を評価され、ハッスルするプレーが定着。チームから求められたコーナー3Pも練習の中で少しずつ成功率を上げ、今度は牧隼利の負傷などでハンドラーを担うチャンスも巡ってきた。 自分にできることからやり続けるー。原点に立ち返り、雑念を消したことが、マカオの地でのハイパフォーマンスにつながったのかもしれない。