ドイツ国内における伊藤洋輝の評価とは? 盟主バイエルンでの活躍を疑問視する声が少ない理由
伊藤洋輝のバイエルン・ミュンヘン加入は日本でも驚きをもって報じられた。伊藤は2021年6月にドイツ・ブンデスリーガのシュツットガルトに期限付き移籍後、順調に出場時間を確保し、2022年5月に完全移籍。2023-24シーズンは新指揮官のセバスティアン・ヘーネス体制を主力として支え、リーグ戦2位フィニッシュの大躍進に貢献。迎えたシーズンオフにバイエルン移籍が発表された。バイエルンでの背番号がクラブのレジェンドであるフィリップ・ラームも背負った「21」番に決まったことからもクラブの大きな期待を感じさせる。では、ドイツでは伊藤はいったいどのような評価を受けている選手なのだろうか? (文=中野吉之伴、写真=ロイター/アフロ)
「ヒロキは25歳ながら経験豊富。我々が求めるすべてを持っている」
現在ドイツで開催中のUEFA EURO(欧州選手権)ではそれぞれの国の誇りを胸に激戦を繰り広げている。24カ国の派遣している選手の市場価値総額で最も高額なクラブがイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティで14選手・推定8億2600万ユーロ(約1404億2000万円)。次いでスペイン・リーガエスパニョーラのレアル・マドリードで12選手・推定6億9200万ユーロ(約1176億4000円)、そして3位につけるのがドイツ・ブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンの11選手・推定5億7000万ユーロ(約969億円)。 ドイツの雄・バイエルンは、2023-24シーズンはリーグ優勝をレバークーゼンに許したとはいえ、それまでリーグ11連覇という離れ業を成し遂げ、世界屈指のスター選手を数多くそろえる伝統的なメガクラブだ。 そんなバイエルンに日本人選手が即戦力として補強されたのだから驚きだ。25歳の日本代表DF伊藤洋輝は、3000万ユーロ(約52億円)の違約金で2028年6月30日までの4年契約にサインを交わした。 バイエルンのSD(スポーツディレクター)マックス・エッベルは伊藤の獲得について、「獲得がうまくいってとてもうれしい。新しいエネルギーをもたらしてくれるハングリーな選手が欲しかった。ヒロキは我々が求めているすべてを持っている。挑戦を受け止め、継続して自分の道を歩んでいける選手だ。25歳ながら経験が豊富で、入れ替え戦やUEFAチャンピオンズリーグ出場のかかった舞台でもプレッシャーにつぶされることなくプレーできる。すぐに正しい補強となってくれるはずだ」とポジティブな言葉を並べている。 とはいえ選手補強時にクラブ関係者が選手へ期待の言葉を述べるのは通例だ。さらにバイエルンには世界に名を馳せるセンターバックが大勢いる。EUROでも印象的なプレーを見せたフランス代表DFダヨ・ウパメカーノ、バイエルンファンから絶大な信頼を寄せられるオランダ代表DFマティアス・デリフト、昨季チームの主軸として活躍した元イングランド代表DFエリック・ダイアー、ナポリ時代にセリエA最高DFと称された韓国代表DFキム・ミンジェがいる。 それでもドイツ国内で伊藤のバイエルン移籍を疑問視する声は少ない。