指揮官の「新たなチャレンジ」に応えた3年生の奮闘で怒涛のリーグ戦6連勝!浦和ユースはプレミア昇格までの“5試合”を全速力で駆け抜ける!
[10.12 プリンスリーグ関東1部第16節 帝京高 1-2 浦和ユース 帝京科学大学千住総合グラウンド] 【写真】伊東純也ら欧州組9選手の秋冬コーデに大反響「黒髪もステキ」「これはずるい」「まじ俳優レベル」 「今日は新たなチャレンジという部分で、プレーできる3年生は全員使った中で、彼らも出れないなりに本当に苦しみながら頑張っていたので、そういった彼らがどんなプレーをするのか、どこまでできるのかは楽しみにしていましたけど、やっぱりいいものを見せてくれましたし、チームの総合力としても成長しているなというのは感じました」。 浦和レッズユース(埼玉)を率いる平川忠亮監督は試合後、開口一番この試合でトライした“チャレンジ”について教えてくれた。プリンスリーグ関東1部第16節。残り4試合でプレミアリーグプレーオフ出場圏内の3位に付けている中、前半戦は敗れた帝京高(東京)と対峙する90分間。チームの命運は3年生に託されたのだ。 もちろん背景にはチーム事情も滲む。2日後にアウェイでモンテディオ山形ユースと対峙するJユースカップの2nd ROUNDが開催されるため、その試合の出場資格のある1年生と2年生のコンディションを考慮する必要があった。だが、“中1日”での試合は年末の大勝負へ向けたシミュレーションの側面も持っている。 「我々は去年広島に行って悔しい想いをしたけれど、広島に行くことではなくて、その先を見据えるという意味では、このプリンスをやって、Jユースという中1日のスケジュールを考えると、広島ではまたこのスケジュールで戦わないといけないので、全員がチームとして機能していかないといけないという部分では、『広島に行って結果を残す意味でも、この2試合は大事だよ』と話しました」(平川監督) 昨年末のプレミアリーグプレーオフでは、1回戦で5-5と打ち合う徳島ヴォルティスユースとの超激闘をPK戦で制したものの、2回戦で帝京長岡高に惜敗し、昇格を逃した経緯を受け、今季の彼らの最大の目標は『広島で2つ勝つこと』。そこからの逆算という意味でも、このタイトなスケジュールに指揮官は確かな意味を持たせ、選手たちに提示した。 もちろん3年生たちも燃えないはずがない。「個人的にも『絶対にこの3年生で勝ちたい』と思いましたし、普段出られていない人もいる中で、この3年生で勝って実力を見せたいというのもありましたね。『勝ちたい』という気持ちは全員が持っていたと思います」。チームのムードメーカーでもあり、後期に入ってから先発出場の続くGK吉澤匠真(3年)はそう語る。スタメンに9人の3年生が名前を連ねた勝負の一戦は、17時ちょうどにキックオフの笛が吹き鳴らされる。 「前半からカウンターは打てるなというところは持ちながらも、だいぶ崩されましたね」。平川監督もそう振り返ったように、浦和ユースは序盤からホームチームのアタックに苦しめられる。14分に迎えた決定的なピンチは、キャプテンのDF阿部慎太朗(3年)が身体でブロック。21分のピンチは吉澤がファインセーブで凌いだものの、26分には相手のヘディングがポストを直撃。いつ失点を許してもおかしくない時間が続く。 それでも、浦和ユースは粘る。ドイスボランチのMF中村絃太(3年)とMF松坂芽生(3年)がセカンド回収に奔走し、右サイドバックのDF横山海斗(3年)は上下動を繰り返せば、FW会田光希(3年)は前線から果敢にプレスを掛け続ける。加えて右のMF井上大輝(3年)、左のMF熊谷陽人(3年)は積極的な仕掛けでチャンスメイク。「普段からずっと頑張っているヤツらなので、必ずできると思っていましたし、信じていました」という指揮官の期待に応えるパフォーマンスを披露する。 劣勢の中で違いを見せたのは、「ディフェンス陣が集中して守ってくれていたので、自分にチャンスが絶対来ると思っていた」というトップ昇格が内定しているストライカー。44分。右サイドで今季2試合目のスタメンとなった井上が仕掛けると、こぼれに反応したFW照内利和(3年)が放った強烈なボレーは鮮やかにゴールへ突き刺さる。「常にシュートの意識は持っているので、あそこは迷わず振りました」。9番のゴラッソが飛び出し、前半はアウェイチームが1点をリードして、45分間が終了した。 後半9分には“下級生”が仕事を果たす。左サイドで獲得したCK。熊谷が丁寧に蹴り込んだキックから、最後はDF田中義峯(1年)がプッシュしたボールがゴールネットへ到達する。スタメン唯一の1年生が貴重な追加点をゲット。浦和ユースがリードを2点に広げる。 だが、ホームで負けられない帝京も意地を見せる。25分にFW森田晃(3年)が叩き込んだ得点はオフサイドで認められなかったものの、28分にはDFラビーニ未蘭(3年)のクロスから、最後は途中出場のFW宮本周征(2年)がファインゴール。2-1。たちまち点差は1点に。残り時間は15分あまりとアディショナルタイム。勝敗の行方はまだまだわからない。 ベンチも相次いで交代カードを切っていく。FW白井桜介(2年)、MF深田京吾(2年)、MF和田直哉(2年)と普段はスタメンで登場することの多い2年生の実力者たちが3年生からバトンを引き継ぎ、強度高くピッチで躍動。ベンチも33分にはDF薄井翼(2年)とFW山根且稔(2年)を送り込み、システムも5-4-1気味にして守り切るフェーズに移行。2年生唯一のスタメンだったDF田中一信、も含めて、相手の猛攻を1つ1つ丁寧に凌いでいく。 「自分のサイドの角に時計があったんですけど、ずっとチラチラ見ても『まだ3分しか経ってない……』みたいな感じで(笑)、ちょっと長かったですけど、途中から入ってきた選手もしっかり試合に入れましたし、『戦い方を全員で共有してやろう』というのは練習でもしっかり話していたので、そこが一体感として出たのかなと思います」(阿部慎太朗) 4分のアディショナルタイムが経過すると、主審の試合終了を告げるホイッスルが聞こえてくる。「この難しい試合で勝ちを持ってこれたのは、3年生の気持ちが見えたり、プレーの質が高かったからで、途中から出た2年生の選手たちも『何としても』と繋いだところは良かったんじゃないかなと思います」(平川監督)。新たな“チャレンジ”の先で手繰り寄せた白星は、浦和ユースにとって勝点3以上の価値を持ってくるような、チームの総合力を証明する結果になったのではないだろうか。 育成年代の指導も2年目。ユースの指揮官に就任してから10か月近い時間が経った今、平川監督の中でも少しずつ選手たちとの関わり方が見えてきているという。 「難しいことだらけですけど、1つは押し付けないということですかね。『オレらはこういうことをやりたい』『オレは監督としてこういうことをやりたい』ではなくて、個々の武器を生かしながら、チームとしてどういう方向性でやるのかというのを示すと、彼らは生き生きしますし、あまり言い過ぎた時には生き生きしないですし(笑)、彼らの特徴を上手く生かしながら、生き生きとプレーできるような方向性を見せないと、縛り付けても何もいいことはないかなというところは感じています」。 「実は分析も彼らにやらせているので、対戦相手がどういうシステムで、どういう守備をしてくる、じゃあ自分たちはどういうふうに戦うかというところを、彼らでミーティングさせています。そこからいろいろ出た意見をこちらでまとめていくんですけど、彼らを見ていて『それでどうだった?』というところは整理しながら、進んでいくイメージですかね。一緒に創り上げているイメージが強いと思います」。 自主性を養いながら、個々のレベルアップを図りつつ、もちろん勝利も追及していく。決して簡単なミッションではないが、指揮官はこの試合でも3年生の力を信じ、2年生にバトンを託し、チーム力の輪をより大きくした上で、結果を引き寄せることに成功している。 「普段は試合に出れていなくて、悔しい想いをしている3年生もいましたけど、今日は全員良かったですし、チーム内で2年生と3年生で競争していけば、もっと良くなっていくと思います」(照内)。エースの発言は間違いなくチームの共通認識。後半戦はこれで怒涛の6連勝。良いサイクルに入った状態で、リーグ戦は桐蔭学園高、東京ヴェルディユース、横浜F・マリノスユースという上位陣と対峙する最後の3試合へと突入していく。 キャプテンの阿部慎太朗が紡いだ言葉が印象深い。「トシ(照内)はトップ昇格するんですけど、他の選手はみんな大学に進学して4年間鍛えることになるので、残り試合をプリンスの“3試合”にするのか、それとも3位までに入って“5試合”にするのかというところで、自分たちの試合の結果でこのエンブレムを付けられる時間も変わってくるという意味で、やっぱり3年生としてはもっと長くプレーしたいとみんなが思っています」。 ここからはすべてがキーゲーム。残された今季の時間で戦うことができるのは、あと“3試合”か、それとも“5試合”か。浦和ユースはチーム全員の力を結集した総力戦で、12月の広島で味わう歓喜まで続いているはずのいばらの道を、みんなで、全速力で、駆け抜ける。 (取材・文 土屋雅史)
【関連記事】
- [プリンスリーグ関東1部]手応えのある戦いから、もう一歩。鹿島学園は勝ちを掴むチームへ
- [プリンスリーグ関東1部]鹿島学園の2年生左SB清水朔玖が直接FK弾。選手権は攻守で活躍し、「高校選抜に選ばれたい」
- [プリンスリーグ関東1部]「『全部、自分とこ来い!』って思っていました」。桐生一の長身CB原田琉煌が抜群の高さ発揮し、自信の1勝
- [MOM4859]桐生一FW高裕徳(1年)_「下から上を倒すっていうチームが自分は好き」という理由で群馬へ。U-15代表歴持つ1年生が初先発で先制ゴール!
- [プリンスリーグ関東1部]9戦未勝利の前期から積み上げた桐生一がセット2発とタフな守りで後期3勝目。選手権予選へ弾みの1勝