伝統芸能を未来へ。高校卒業資格も取得できる、芸舞妓の養成スクールが岐阜市で開校
コロカルニュース
三味線や長唄に合わせ、美しい着物に身を包んだ芸舞妓の姿は、日本の伝統芸能のきらびやかな美しさを表現し、見るものを惹きつけてやみません。しかし、こうした伝統芸能を受け継ぐ人たちは、減少の一途をたどり、風前の灯火となっています。 【写真で見る】2024年4月に行われた開校式の様子。 岐阜県岐阜市の芸舞妓が所属する団体、鳳川伎連(ほうせんぎれん)が母体となり、新たな人材育成の取り組みとして、2024年4月、遊宴文化の担い手を育てる岐阜伎芸学院を開校しました。 ■おもてなしの心を育て、日本文化を学び伝える 岐阜県長良川流域は、古くから美濃和紙、和傘、岐阜提灯といった伝統工芸の盛んな地域でした。古式ゆかしい1300年の歴史を持つ「長良川鵜飼」でも有名な場所です。日本文化を通しておもてなしを伝える花柳界も、江戸、明治の頃から、町衆・旦那衆に支えられ、発展してきました。ここ岐阜では、昭和の初めには、500名もの芸舞妓が活躍していたのだとか。 しかし、時代の変遷とともに伝統工芸品の生産量が減少し、町の活気も失われていきました。そして、それは遊宴、伎芸文化の世界にも波及し、現在では14名の芸妓で、お座敷や宴席を支えるほどとなっています。しかし、その一方で、映画やドラマで取り上げられる舞妓の姿に関心を持つ若い世代や外国の観光客は年々増加。「舞妓さんのような着物を着てみたい」「踊りを習ってみたい」「所作を知りたい」といった憧れの声が高まってきているのです。 ■専科だけでなく、幅広いニーズに応えるカリキュラムを提供 「本来、芸舞妓の育成は、町ぐるみで歴史や文化を伝え、作法や精神性を女将さんたちとの生活の中で受け継がれてきたのです。しかし、時代の変化、ライフスタイルの変化で、そういった徒弟制度が難しく、体系的に教えていくための学校の必要性を感じ、スタートしました」と語ってくれたのは、岐阜伎芸学院の代表理事である小野崎隆賢(おのざき りゅうけん)さん。 岐阜伎芸学院では、今まで18歳以上しか受け入れていなかったお茶屋での舞妓修行を中学卒業と同時に学べる、高等科を設置。芸舞妓への稽古に取り組みながら、中京高校の通信制と提携し、サポート校として高校卒業資格を取得できる独自のカリキュラムをつくりました。 「3年間で芸舞妓の基礎の部分を習得してもらい、その後は専科へ進み、本格的な芸舞妓の養成を行っていきます。また、今後は裏方を育てるコースも設けていく予定です」と理事の芳川辰次(よしかわたつじ)さん。 高校を卒業して、舞妓としての技能、訓練を学ぶための予科や芸妓を目指す専科、さらには、小中学生が習い事の一貫で通い学べる中等科や、社会人が三味線や日舞を学べる別科といったそれぞれのニーズに沿った専攻課程を設けています。 ■舞妓に憧れ、中学卒業後と同時に伎芸学院に入学 今年、第一期生となる岐阜市在住の廣瀬希(ひろせ のの)さんは、お母さんとの京都旅行で出会った舞妓さんに、興味を抱きました。そして、いろいろ調べていくうちに、地元岐阜に舞妓になるための指導が受けられる岐阜伎芸学院ができることを知り、応募したそうです。お母さんも高校卒業資格が得られるということもあり、希さんの夢を応援してくれたといいます。 「最初は、舞妓さんの外見や着物を美しいという憧れだけで見ていたのですが、実際にお稽古を始めると、立ち居振る舞いや所作など、とても繊細なことが多く、だんだん心が洗われるような気持ちになりました。先生方もダメなことはダメとしっかり伝えてくれ、真剣に接してくれる家族のようなあたたかさがあり、日々、心が整えられていく感じがします。人との関わりをとても大事にしていて、『人にしたことは必ず自分にかえってくる』といった、生きていく上で大事なことも教えていただけるのもうれしいです」と希さん。お茶の淹れ方やお客様への応対など、学ぶことがたくさんあるといいます。