<映画評>身近に潜むネットでの危険『ディス/コネクト』
ちょっとしたSNSのコミュニケーションで傷ついた経験は、誰しも心当たりがあるのではないだろうか。いつでも仲間とつながり、楽しさを共有できるオンラインのツールのはずのSNS。電車の中、家庭、会社、学校……。いつでもどこでも気軽につながるツールだが、意図しないことで人を傷つけたり、傷ついたりする。それが発展すると、さまざまな事件を巻き起こしかねない。そんな危険が背中合わせとなっている。 この映画のコアは、SNSによる嫌がらせが引き起こした自殺未遂事件。しかし、それだけに留まらない。ネット詐欺、未成年のオンラインデーティングなど。オンラインにおける危険をリアルに生々しく表現している。身近なテーマであるだけに、ふとしたシーンにも緊張感があふれていて、作品に飲み込まれてしまう。主役も存在しないのでは、と思う。それぞれが自分たちの世界で生きていて、それが複雑に絡み合ってくる。複数の事件が同時に進行していくので、スピード感があり115分の映像が、あっという間に流れていく。 10数年前、インターネットが普及し始めた頃には、その楽しさを伝える映画がたくさん作られた。ネットを通じた出会いの面白さも美化されていた。もちろん、ルールを守って使っていれば、これほど素晴らしいテクノロジーはないだろう。しかし、そのテクノロジーは多様化され、ITリテラシーを持つものだけでなく、利用者層は拡大している。同時に悪意を持つものも現れている。そういったリスクに対し、この作品は警鐘を鳴らしてくれているのではないだろうか。
■公開情報 『ディス/コネクト』 [監督]ヘンリー=アレックス・ルビン [出演]ジェイソン・ベイトマン、ホープ・デイヴィス、フランク・グリロ (c) DISCONNECT, LLC 2013 配給:クロックワークス 5月24日(土)より 新宿バルト9他にて公開