【コラム】悔しさだけが残るイラン戦。どん底を経て期待される板倉滉の進化と奮起 | AFCアジアカップカタール2023
第2次森保ジャパンが発足して以降、誰よりも最終ラインを支えてきたのは板倉である。吉田麻也が選ばれなくなり、冨安が怪我のためコンスタントに出場できない中、板倉は常に守備陣の中心として活躍していた。性格的にも周りとコミュニケーションを取ることが得意で、チーム全体を見ても中心人物の一人となっていた。 だが、こういった大会における最終ラインの選手としては、経験値不足を感じざるを得なかった。東京五輪やカタールワールドカップでの経験はもちろんあるが、それは横に吉田がいたことも大きい。チームの中核としてピッチに立つ中、やはり今大会で試合中に周りをまとめられていたかという点では疑問符がつく。ベトナム戦やイラク戦もそうだ。苦しい状況に陥る中、守備陣を一つにすることはできなかった。 インドネシア戦でピッチに戻ってきた冨安を見れば、その違いは明らかだった。DFとしての能力という意味ではなく、声かけやラインコントロール一つをとっても周りに対する要求は強かったように思う。それが周りに波及していき、ソリッドな守備を完遂させることができていた。それを冨安がいるからといって板倉がやらない理由にはならない。 誰よりも悔しさを感じているはずだ。だからこそ、この大会をどう捉え、どう変わっていくかが重要になる。もっとチームの中で存在感を高めていく必要がある。そのためには個の能力を上げることはもちろんのこと、メンタル面やチームを牽引する力に対してもさらに突き詰めていかなければならない。 「毎試合、大事にして戦っていかないといけない。また最終予選だったり、こういうカップ戦の戦いのときに力が出せるかは日ごろが全てだと思う。ドイツで自分のパフォーマンスを出すことに集中したい」 どん底に突き落とされるような経験を経て、どのように立ち上がっていくか。この経験が板倉をさらに強くすることを期待している。 文・林遼平 1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
林遼平