名優たちの“舌戦”は圧巻/映画評『マダム・マロリーと魔法のスパイス』
のんびりとした南フランスの美しい景色やうっとりするほど洗練されたエッフェル塔を臨むパリの夜景、垂涎ものの料理の数々、ヒロインを演じたシャルロット・ルボンのキュートさ。見どころ満載の作品な上に、スティーブン・スピルバーグとオプラ・ウィンフリーがタッグを組んだとあっては、面白くないはずがないだろう。
南フランスの美しい小さな田舎町にあるミシュラン1つ星の老舗フレンチ・レストランを経営するマダム・マロリー。その真向かいに引っ越してきたインド人ファミリーが、“ド派手”なインド料理店をオープンさせたことで、壮絶なバトルが繰り広げられる。そのインド料理店のシェフ、ハッサン(マニッシュ・ダヤル)の腕前は超一流。その天才シェフを取り巻くさまざまなドラマが愛情たっぷりに描かれた作品になっている。笑いあり、感極まるシーンもあり、そして色とりどりの料理。エンターテインメントが凝縮されている。 個人的な印象だが、最大の見せ場はフレンチ・レストランのオーナー、マダム・マロリー役を演じるヘレン・ミレンと、その店の向かいにインド料理店をオープンさせた“パパ”役のオム・プリとの舌戦だろう。プライドの高いフランス・マダムに対し、口も態度も悪いインド出身のパパが強烈なほどにやり合う様子は、場内から笑い声がこぼれるほど微笑ましくもあり、この映画の盛り上がりどころとなっている。 『クィーン』(2006年)でアカデミー賞主演女優賞を獲得したヘレン・ミレンの演技力は圧巻で、気難しいオーナーを見事に表現している。オム・プリは、インド出身でインドを代表する名優。英国のアカデミー賞にノミネートされるなど、世界的にも注目されているだけあり、愛すべき“濃すぎる”キャラクターを演じている。最初から最後まで、存分に楽しめる作品に仕上がっている。 ■公開情報 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』 監督:ラッセ・ハルストレム 製作:スティーブン・スピルバーグ、オプラ・ウィンフリー、ジュリエット・ブレイク 原作:リチャード・C・モレイス (集英社文庫) 音楽:A.R.ラフマーン 出演:ヘレン・ミレン、オム・プリ、マニッシュ・ダヤル、シャルロッテ・ルボン、ミシェル・ブラン (C) 2014 DreamWorks ll. Distribution Co. All Rights Reserved. 11月1日全国ロードショー