取材に応じてくれた（左から）上原左大さん、中井杏果さん、酒井佑真さん＝9月30日、愛知県豊田市【時事通信社】

◆2年で職場直結の科に配属 　トヨタ本社内にある平山豊和寮で午前6時起床。7時までに朝食を済ませて、社のバスで40分かけて登校する。8時30分から午後2時50分までが授業時間だ。3時～5時半は特別活動、その後クラブ活動をしてから、7時にバスで寮に戻る。8～9時に夕食を取り、10時10分までに入浴を済ませ、その後は自習などで時間を過ごし、11時に消灯となる。門限は午後9時。1カ月に1度、外泊もできる。 　授業は、英語や国語、数学などのほか、体育や家庭といった普通科目と、工業技術基礎、製図など専門科目で構成されている。 　英語と国語は教員免許状を持つ非常勤講師が、化学や地理歴史、体育などは科学技術高校の教員が、数学や専門科目は大学工学部出身のトヨタ社員がそれぞれ受け持つ。 　2年になると、精密加工、塑性加工、自動車製造、自動車整備、金属塗装、鋳造、機械加工、木型の8科に配属される。これは将来の職場に直結しており、適性を基に社が決定する。 　各科ではまず、自動車作りの基本的な知識を学び、学園内の施設で研修を受けた後、県内の工場で訓練を受ける。こうした学科と実習を1週間交代で繰り返し、知識や技能をじっくり身に付けていく。 　クラブ活動は必ずどこかに所属しなければならない。まず、技能五輪全国大会出場を目指す生徒がモノづくり部に選抜される。この他、体育系では硬式野球、サッカー、ソフトボール、陸上、バスケットボール、バレーボール、剣道、文化系では吹奏楽が用意されている。高校生の大会に出場することができ、今年はソフトボール部が27年ぶりに全国高校総体に駒を進めた。練習にはトヨタ自動車各部も使用するスポーツセンターの本格的な陸上競技場や硬式野球場などが利用できる。 　寮は冷暖房、机、ベッド完備の一人部屋だが、コミュニケーションルームで交流を深めることもできるという。 　休日は一般的な高校生のような長期のものはなく、工場と同様、土日と年末年始、大型連休、盆休みがあるだけ。この他、授業がない日は海外研修やボランティア活動に充てられる。また、登山や遠泳、120キロ歩行などかなりきつい訓練行事が待っている。 ◆卒業生からは副社長も 　これまでの卒業生は約1万9000人。最も昇進したのは副社長を務めた河合満エグゼクティブフェロー。「河合おやじ」と親しまれている。また、本部長や工場長など幹部職員にも卒業生が名を連ねている。 　現役の生徒は、学園生活をどのように感じているのか。愛知県出身で3年の上原左大さんは「親を安心させたかったから」と志望動機を話す。静岡県出身の3年中井杏果さんは「女子は人数が少ないが、その分団結力がある」と話す。休日は友人と買い物に行ったり、カラオケを楽しんだりして過ごしている。酒井佑真さんは愛知県出身の3年。父もトヨタ社員で「訓練はきついが、父を越えたいと思ってこなしている」という。 　一般的な高校とは違い、規律も厳しく留年即退社。集団生活になじめず、自主退学する生徒も毎年2人ぐらいいる。 　採用を担当する育成企画グループの横井章典グループ長は「少しやんちゃな感じの子どもは工場現場でかわいがられて伸びる」と話す。ホームページを見て関心がある生徒や保護者には、説明会や見学会も用意されている。