「アクネ ストゥディオズ」が初のフレグランス 始まりはフレデリック・マルからの一通の手紙
パリとストックホルムで深めたアイデア
パリのカフェでは、“ダン テ ブラ”の香りについてなど幅広い会話を繰り広げた。ヨハンソン=クリエイティブ・ディレクターはストックホルムに戻ると、スウェーデンの食器やデザイナーのアクセル・アイナル・ヨルト(Axel Einar Hjorth)の松製家具、民謡「ディア オールド ストックホルム」、イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)監督の映画「ペルソナ」など、彼にとって大切な地元の品々のイメージを集めてムードボードにまとめた。
その後、マル創業者が香りのアイデアを持ってストックホルムを訪れ、14個のアイデアを検討した。ヨハンソン=クリエイティブ・ディレクターは「スウェーデンの白夜についてもよく話し合った。“メタリックな透明感”や“モダンで未来的”なもの、でもコンセプチュアル過ぎないものが好きだ」と語った。
インスピレーション源は「アクネ」のスカーフと衣料用洗剤?
調香は、「アクネ ストゥディオズ」の象徴的なピンクのスカーフを視覚的な出発点に始まった。衣料用洗剤の匂いをアイデアの核に据え、それを上質なフレグランスの領域にまで高めた。シムライズのスージー・ル・ハレ調香師は、「『シャネル(CHANEL)』の“No.5”以降知られてきたフローラルでパウダリーなアルデヒドの香りを見直し、より現代的な原料を使用した」と言い、バニラも加えた。スカーフと同じように「快適で、自分自身を包みたくなるようなフレグランスを作ろうと思った」と話す。
課題はいくつかあった。ヨハンソン=クリエイティブ・ディレクターは「花の匂いの中には息苦しく感じるものがある。フローラル系の香りはケミカルな感じやキラキラした感じがないとあまり好きではない。洋服との相性についても考え、柔軟剤について話し合った時にちょっとキッチュな感じがして、それが気に入った」。
完成したフレグランスは、力強く持続性があり、ネオクラシカルな側面があるとル・ハレ調香師は話す。マル創業者は、ピンク、青、黄色を帯びた真珠のような輝きを感じたという。ヨハンソン=クリエイティブ・ディレクターは「定義しがたい“未来的な古典主義”を感じさせる。認識できるけれど、全く認識できない。ただただ、好奇心をそそられるだろう」と話した。