【映画ライターの週末映画案内】エマ・ストーン演じる“ベラ”にひたすら圧倒される『哀れなるものたち』|Mart
ゴシック・ファンタジーの世界観の中で女性の自立を描いた冒険物語『哀れなるものたち』が1月26日から公開されます。第80回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、第81回ゴールデングローブ賞で作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、第96回アカデミー賞では11部門にノミネートと大注目のこの作品。エマ・ストーンの演技に終始釘付けになってしまう、不思議な物語の魅力を紹介します。
『哀れなるものたち』あらすじ
ヴィクトリア朝時代のロンドン。自ら命を絶った不幸な若き女性ベラ(エマ・ストーン)は、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手によって、奇跡的に蘇生する。それも生まれたての女性として。 ゴッドウィンの庇護のもと日に日に回復するベラだったが、「世界を自分の目で見たい」という強い欲望に駆られ、放蕩者の弁護士ダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ )の誘惑で、ヨーロッパ横断の旅に出る。 急速に、貪欲に世界を吸収していくベラは、やがて時代の偏見から解き放たれ、自分の力で真の自由と平等とを見つけていく。そんな中、ある報せを受け取ったベラは帰郷を決意する。
【見どころ①】何者にも縛られない女性の自立を描く
Emma Stone and Mark Ruffalo in POOR THINGS. Photo by Atsushi Nishijima. Courtesy of Searchlight Pictures. © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved. 天才外科医・バクスター博士のある実験により、自殺を図った後に生まれ変わったベラ。見た目は大人の女性の体だけど脳は0歳児そのもので、言葉も歩き方もこれから覚える。まさに人生をリセットして“生き直し”をする女性を描いた奇想天外な物語です。
(From L-R:) Margaret Qualley, Willem Dafoe and Ramy Youssef in POOR THINGS. Photo by Yorgos Lanthimos. Courtesy of Searchlight Pictures. © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved. 生まれ変わったベラはしばらく外の世界に触れずに博士の家で暮らすので、世間の常識や当時の女性が置かれた立場からまったく自由。何者にも縛られず、タブーや男社会のしきたりをものともせず、貪欲にどんどん世界を吸収していきます。 そんなベラの姿は、“究極にピュアなフェミニスト”。女性が女性である喜びやセクシャリティを、一つひとつ確認しながら、男性に支配されることから解放されていきます。思想が自由過ぎて、そのやり方がちょっとおかしな時もあるのですが、女性にとってはかなり痛快。と同時に、現代社会でもまだまだ男女の賃金や地位格差が埋まらず、男性優位な社会が続いていることを実感させられます。