【映画ライターの週末映画案内】エマ・ストーン演じる“ベラ”にひたすら圧倒される『哀れなるものたち』|Mart
【見どころ②】エマ・ストーン演じる“ベラ”にひたすら圧倒される
Emma Stone in POOR THINGS. Photo Courtesy of Searchlight Pictures. © 2023 Searchlight Pictures All Rights Reserved. 生まれ変わって人生をやり直すベラを演じたエマ・ストーン。赤ちゃんからのスタートなので最初は歩けないし、歩けるようになってもバランスがおかしく、ダンスシーンでは手足の動きがバラバラ。大人が赤ちゃんになってしまうと、こういう動きになるんだろうな、という説得力がありました。 そして成長するにつれて性の喜びを知り、ベラはセックスに対しても欲望に忠実過ぎるし自由奔放。裸や下着姿はもちろん性描写のシーンも多いのですが、もはやいやらしさを通り越して「エマ・ストーン、すごい! 役のためにここまでできるなんてあっぱれ!」という清々しさすら感じました。
Emma Stone in POOR THINGS. Photo by Yorgos Lanthimos. Courtesy of Searchlight Pictures. © 2023 20th Century Studios All Rights Reserved. 一方で世の中を知り知的に成長していく過程も見事に演じていて、脳と心と体がつながっていく様子はまさに圧巻。 エマ・ストーンはこの作品で、ゴールデングローブ賞の最優秀主演女優賞を受賞していますが、今年はアカデミー賞でも『ラ・ラ・ランド』(2016年)に続く二度目の主演女優賞を獲得するのではないでしょうか。そう予想させるくらいの圧倒的な演技力でした。
【見どころ③】こんな映画観たことない!と感じる唯一無二の映像世界
POOR THINGS. Photo Courtesy of Searchlight Pictures. © 2023 Searchlight Pictures All Rights Reserved. この作品はベラの成長と自立の物語であると同時に、ロンドンから船でリスボンへ向かい、パリにも降り立つヨーロッパ横断の冒険物語になっています。 この美術セットが本当に素敵! 当時のリアルな船や建物を忠実に再現するというよりは、ファンタジーやSFの要素も入っていて、空の色も独特で絵画的。バクスター博士の邸宅、ホテル、ロンドンやパリの街並みなどすべてをスタジオに建てた結果、エマ・ストーンが「歩き回るのに30分はかかる」とコメントするほど華麗で壮大なセットの中で撮影されています。 ドレスを中心とした衣装も独特で美しく、それをエマ・ストーンはじめ女優陣が見事に着こなしています。さらに、あえて調和の取れていない不思議な音楽が、作品全体に漂う不思議な雰囲気をつくり上げています。