教育委員会の改革、焦点は何?/大津いじめ自殺事件きっかけに議論
2011年10月の大津市のいじめ自殺事件がきっかけとなり、学校などの教育機関をチェック、指導する立場の教育委員会が機能せず、形骸化しているという問題が浮上しています。そこで、教育委員会制度を見直す改革案が文部科学省の審議会で議論され、8月中にも原案が出る予定です。焦点は何でしょうか。 教育委員会は、原則として首長(知事または市区町村長)が任命した5~6名によって構成されます。委員のメンバーは、年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮されています。また、教育を政治から独立させ、“住民の目線”でチェックするため、首長からは独立した組織となります。 そのうえで教育委員会は、教育行政の指揮監督を行います。その権限は幅広く、公立学校や図書館などの設置と廃止、教員の任免、学校給食、文化財の保護、さらには教科書や教材の選択などが含まれています。
委員会の下には事務局があって、教育行政の実務を行います。事務局の統括者となるのが教育長で、これも教育委員会の中から選ばれます。
大津市のいじめ自殺事件などでは、委員会が実態を迅速につかめず、学校への指導も不十分だったことが指摘されています。そこで文部科学省の審議会でも、事務局の統括者である教育長に地方教育行政の権限と責任を集中させるべく、自治体の首長が教育長を任命する方向で論議が進んでいます。
教育長に権限を集中させるのか
しかし、この改革の方向性は、「首長が任命する教育長への権限集中には教育への政治介入という危うさが付きまとう」(4/17付、神戸新聞社説)という指摘もあります。たとえば教科書選択、日の丸掲揚や君が代斉唱の問題、外国人の教育の問題、あるいは実際に大阪で起きた、体罰事件を契機に入試が中止されるような問題に際して、首長の意見が非常に強く反映されるということになりかねません。 大津のいじめ自殺事件の場合も、動かなかったのは委員会ではなく、教育長が統括する事務局ではなかったかともいわれています。「多くの自治体では、事務局は教員出身者が主体だ。身内意識や目上の校長への遠慮から学校を強く指導できず、学校をかばおうと委員会への報告が甘くなりやすい構造にある。」(8/5付、朝日新聞社説)という指摘もあるほどです。 仮に教育委員会が「形骸化」していたり、「危機管理能力が不足している」ことが今日の教育問題の原因なのであれば、委員の人選を変えるという方法もあります。また、事務局やほかの行政部局に任せていい問題はそちらに振り、委員会は子どもの安全や教科書採択のような重要な事項に議題をしぼり、じっくり話し合える環境を整えるという方法もあります。 このように改革の方向性にはさまざまな選択肢がありますが、教育長に権限を集中させる案については否定的な論調がメディアに多く見受けられます。