【K-1】“超象”チャンプア・ゲッソンリット――日本で最も愛されたムエタイ戦士の今。心身を削る激闘は「タイ人で外国人の重量級と戦えるのは当時僕しかいなかったから」
90年代、日本のリングで活躍したムエタイ戦士チャンプア・ゲッソンリット(タイ)を覚えているだろうか。 【写真】58歳となった今も元気にミットを持ち、後進の育成に励んでいるチャンプア チャンプアは1989年11月29日、東京ドームで開催されたUWFの興行『U-COSMOS』に初来日。安生洋二と異種格闘技戦を行い、日本でその名を知られるようになった。 その後は本来のムエタイ&キックボクシングの試合でたびたび来日。圧倒的な強さで人気を博し、タイやオランダでは故ロブ・カーマン、故ピーター・スミットらと激闘を演じ、ムエタイの強さを重量級で証明した。 K-1には1993年4月30日の旗揚げ戦から参戦し、本来はウェルター級~ミドル級(66.68kg~72.57kg)の体格にも関わらず90kg越えのヘビー級選手たちと対戦。勇敢な戦いぶりで多くのファンのハートを揺さぶった。また、象のイラストが入ったトランクスがトレードマークで“超象(スーパーエレファント)”と呼ばれ、トランクスも人気だった。 日本では1997年7月の沖縄での試合が最後となっている。一時期は日本でトレーナーを務めていたこともあったが、現在はどうしているのか。 『ゴング格闘技 No.335 2025年1月号』では、現在タイ・バンコクにあるゲッソンリットジムでトレーナーを務めている、58歳になったチャンプアを訪ねた。 40歳の時にパタヤで行った試合を最後に、怪我で引退したというチャンプア。古巣ゲッソンリットジムのトレーナーは2年前から務め、後進の育成に励んでいる。K-1時代の試合について話したチャンプアは「試合の後は毎回ファンのみんなに囲まれてすぐに帰ることもできなかったのですが、凄く幸せな時間でしたね」と懐かしそうに振り返る。 今ではあり得ないような体重差の相手にも果敢に挑んでいった姿は、多くのファンの感動を呼んだ。チャンプア自身は身を削るような戦いをどう思っていたのかと聞くと「タイ人でそういう規模の選手と戦えるのは当時僕しかいなかった」と、愛する国技ムエタイのために文字通り身体を張って戦っていたのだと答える。 日本で活躍した時代の話以外にも、現在のK-1やONEについても語ったチャンプア。身体は故障だらけで体重差のある激戦のダメージも負っているはずだが、実にエネルギッシュに取材に応じてくれた。今でもエネルギッシュな秘訣は何かと聞かれると、チャンプアは「今は58歳になりましたが、与えられた仕事を何でもしているからでしょう。練習もするし、荷物運びを頼まれればしますし、色んなことをやって身体を動かしているからだと思います」と微笑んだ。 取材・写真/安村発
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