トヨタ自動車アンテロープスで6年目となる指揮官、大神雄子ヘッドコーチ「一人ひとりが考える力を身につけることができる環境作りを」
「自分が1年後どうなっていたいのか、一言で言うと『WOW』」
──トヨタ自動車の指導者として6年目を迎えます。今後、コーチとしてどうあっていきたいですか。 いろいろなコーチ像があると思うんですけど、まずはパッションとエナジー。そこは年齢に関係なくコーチをしている時は一番大事にしたいです。選手にもそうあってほしいけど、そのためには自分がそれを表現しなきゃいけないと思うので、自分がコートに立ってエナジーを出して、バスケットボールに向き合う姿勢を出し続けたいです。私は良いものに対してはみんなで一緒に喜ぶし、負けた時はみんなで話して悔しさを共感するチームでいたいです。コーチとしてはそこが一番かな。 『コーチ』はハンガリーのコチという場所が語源です。コチでは馬車が盛んに使われており、目的地に運ぶ(導く)馬車を見た人たちがつけました。なので、戦術で目的に導くのはココーチングの一つの方法です。そして、リーダーというのは「俺俺」、「私私」じゃなくて、「私達」と言えるかどうかだと思っています。それは普段の姿勢から出るモノだと思っているので本当に大事にしています。 ──来シーズン、チームも選手も変わりますがどんなバスケを展開していきたいですか。 今いるメンバーで、自分がやりたいと思ったバスケットボールをやることがいいのか、今いる選手に合わせた方がいいのかとなったら、私は後者です。そのシーズンのメンバーの中で選手たちの持っている可能性をどうやって引き出してあげられるかがコーチングだと思っています。(トヨタ自動車が)小さくなってリバウンドをどうするんだとか、大丈夫かと思われる人もいると思います。でも、あえてそこに挑戦していくことも自分にとっては一つの楽しみなんです。自分が1年後にどうなっていたいかを一言で言うと『WOW』なんです。自分も回りも選手たちも『WOW』。トヨタのみんなが『WOW』と思うようなチーム、スタイルを築いていきたい。そういう方向にシフトを組んでます。 ──Wリーグは移籍が増え、海外にチャレンジする選手も増えてきました。その変化についてどう思いますか。 デンソーの髙田真希選手が16年目で初めて優勝したり、町田選手かも富士通で13年目にして優勝を手にする、そういうのがなくなっていくと思います。ただもちろん、『one of club』と言葉があるように、一つのチームに居続けられるレジェンドという存在も実際あります。だからこそフロントがどういうビジョンを立てるか、それを現場のコーチたちとどうやって連携していくか。それを明確に出すことが重要だと思います。 選手の海外流出を防ぐにはやっぱりWリーグが変わることか必要だと思います。「Wリーグでやりたい」と、そこに価値を生み出さないと出ていく一方になる。ただ、私も海外挑戦した身なので、海外挑戦自体は良いことだと思っています。 ──今年の5月にWNBAのダラス・ウィングスとオフィシャルパートナーとして提携しました。こちらも新たな取り組みの1つだと思いますが、ご自身のWNBA挑戦も含めてこちらの経緯を教えてください。 私もWNBAに挑戦させてもらった中で、同じバスケだけど本当にやりたいと思わせてくれる唯一無二のリーグがWNBAでした。今、コーチになってもそこを目指しています。今回の提携はコーチ、選手、チームという3つの要素があり、チームで言えばフロントがエンターテインメント性、事業性のところ。選手からすれば『あの舞台に立つ』というモチベーション。コーチからするとアメリカのバスケットボールを学べる機会という3つ。何故アメリカが金メダルをずっと取り続けられるのか、そこを考えた時に、アメリカのチームから学ぶことは、選手だけじゃなくてコーチもフロントにも必要だと。そこも含めてダラスに声をかけたんじゃないかなと思っています。トヨタアンテロープスというチームがダラス・ウイングスのオフィシャルパートナーとなれば、例えばアメリカに行って練習ゲームやプレシーズンマッチができる。シーズンが終わってトレーニングキャンプ期間中にコーチがアメリカに行って、コーチングを勉強できる。あとは集客やホームゲームの運用のノウハウを学ぶとか。そういうところのファーストステップになるかと考えています。 ──最後にファンの方々へ来シーズンに向けてのメッセージをお願いします。 昨年悔しい思いをした中でのチームスタートとなりました。前を向いて、ここからどうやってやっていくのか、どう行動していくのかがすごく大事です。まずはその準備を全員で楽しむ。みんなでエンジョイする環境の中で、良い準備をすることを一つ掲げて、一つひとつ前に進んでいきたいと思っています。てっぺんを目指していく中で何をしていけばいいのかを考え、一人ひとりが考える力を身につけることができる環境作りを、ヘッドコーチとして取り組んでいきます。ですので、来シーズンもぜひ会場に来ていただいて、時に叱咤激励を含め応援いただけたらと思っています。
バスケット・カウント編集部