2024年のベストスニーカーと昨今のシューズ事情-mita sneakers-
ニューバランス × ミタスニーカーズ/MT580 “OGコンボ”
⎯⎯それでは、ここからはベストスニーカーの紹介をお願いできればと思います。1足目は、ミタスニーカーズといえばの「ニューバランス(New Balance)」との協業で、10月に発売されたモデル「MT580 “OGコンボ”」です。 国井:「MT580」の昔話からさせていただくと、1996年に日本改良品版として発売されたOGモデルが最終的にワゴンセールに行きになった中、へクティク(HECTIC)やミタスニーカーズなどの身内で流行り、その後に偶然にもコラボの話が舞い込み、同モデルが世界的な支持を得た結果、インラインとしても2008年にグローバルローンチされた、という話だったのが、「ワゴンセールのスニーカーがコラボで世界に広がった」と切り取られがちで。改めて振り返った時に、一番重要な僕らがどこの誰よりもOGモデルが好きだという事実が伝わっていなかったことに気がついて、2つのOGカラーを組み合わせた「MT580 “OGコンボ”」を締めくくりとして作らせて頂いたんです。 ⎯⎯ストーリーがミタスニーカーズさんらしいですね。 国井:日本だけで販売されていた「MT580」が逆輸入的にグローバルローンチを迎えた2008年、トリプルネームの「MT580」第2弾と第3弾のカラーリングを組み合わせたカラーウェイをリリースしたことがあったんです。今回は、そのコンセプトを踏襲しつつ、OGカラーでブリングバックさせた感じですね。 ⎯⎯シルエットはOGモデルから少し変わっている気がします。 国井:僕らはポテっとした丸っぽいシルエットの「MT580」が好きだったんですけど、今、復刻では「900番台」や「1000番台」などナローなシルエットが好まれる傾向にあるので、ラストがやや細身のSL-1に変更されています。ただ、「“OGコンボ”」を謳っているのに当時のボリューム感が足りないのは嫌だなと思っていたら、ニューバランス ジャパンの次世代のデザイナー陣に「昔はシュータンやライニングのパッドがパンパンでしたよね」と言われて。当時、「ニューバランス」だけでなく他のスニーカーも、パッドに綿を入れてパンパンにすることでホールド感を補う作りをしていたんですよ。それを再現することで、当時を知っている方は足入れした時のフィット感を思い出せるし、当時を知らない若い方はシューレースをルーズに通して足元にボリュームを持たせられるし、世代によって違う履き方が楽しめるようにしました。カラーリングやシルエットは画面上でも分かるけど、感覚は履かないと分からないという、スニーカー本来の醍醐味ですね。 ⎯⎯「MT580」は生産が終わると耳にしましたが。 国井:そうなんです。昨年グローバルでフォーカスされ、アジアでのみ今年も継続的にその動きがあり、最後にシュリンクした感じで終わるのは嫌だったので、締め括りとしてアトモス(atmos)さんと足並みを揃え(*同時期にコラボモデルを発売)、大きな波を作って終わらせる気持ちで作りました。 ⎯⎯アトモス千駄ヶ谷店では、ミタスニーカーズのコラボ「MT580」のアーカイヴモデルを展示するエキシビションが開催されていましたね。 国井:このプロジェクトが始まった時から、小島くん(アトモスのディレクター小島奉文)と「最後に何か一緒にやろう」と話していたんです。アーカイヴモデルは全て保管していたのですが、何十年も前のスニーカーだから加水分解が進んでいることもあり、綺麗に見せられる最後の機会だと思い、小島くんからの依頼に快諾した形です。 ⎯⎯ミタスニーカーズのアーカイヴ展示は珍しいですよね。 国井:好きなモデルや思い入れのあるスニーカーを聞かれた時、「最新作」と答えるくらい僕は懐古主義的ではないので。でも、ミタスニーカーズがアトモスさんのあの場所で展示することや、OGモデルを知らない世代にとってはフレッシュなことを考えると、アリかなと。それに、良くも悪くも日本のパワーが薄れてきている時代だし、一緒に取り組めることは一緒に取り組んだ方がいいじゃないですか。個人としてはちょこちょこアトモスさんのお手伝いをしてきたんですけど、ミタスニーカーズとしては久々でしたね。実は、アトモスとニューバランスの初コラボにはミタスニーカーズが関わっていて、2006年にそれぞれ2色ずつ「1700」を用意して、全4色をミタスニーカーズvsアトモス形式で発売したんですよ。世間は“プロレス”が好きなようですが、スタイルは別としてスニーカー屋としての根底は一緒ですから。